• タグ 『 SS 』 の記事

2012年4月1日エイプリルフール限定公開したベアルファレスサイトより、そろそろ時効と言うことで収録。
EDネタバレ&主人公設定について妄想した産物です。


 光の爆発から一年――
 それは偶然だった。共に物質世界と精神世界の融合を砕いた預言者が、まだカルス・バスティードにいると知ったのは。
「……まさか」
 ウェルドは信じられない思いで呟いた。
 活火山内の廃墟に残っていても、訪れるものは死しかない。カルス・バスティードは異名通り彼の棺桶となるだろう。
 そもそも、世界から消えたウェルドを彼が待つなんてことは想定外だ。
 そんな感情論では動かないと思ったから、彼を選んだのに。

 ウェルドは、アスラ・ファエルの外に在る《神》の人形である。
 世界を救うため、あの日カルス・バスティードへ行く荷馬車に乗り込んだ。その瞬間から「ウェルド」は誕生した。
 それから半年あまりの旅程は、ウェルドが初めて体験する、けれどどこか見知っているような出来事の連続だった。
 時折、ウェルドは思ったものだ。
 《神》は既に何度も時を繰り返して、世界を救っているのかも知れない。その時のウェルドは女だったかもしれないし、預言者は別の人間だったかもしれないし、時には彼を殺したかもしれない。

 けれど、ウェルドが共に歩んだ預言者は彼だった。

 行かなければ。
 そう思い、ウェルドは立ち上がった。
 既に《神》の目的は果たされた。役割を終えた預言者がなにをしようと、それは彼の自由だ。カルスの棺桶で死のうとも、故郷に帰って本懐を遂げようとも。
 その自由は、ウェルド自身にもあるはずだ。

 そして、ウェルドは神なきアスラ・ファエルへの扉を開いた。


ベアルファレスの主人公は、普通の人間ではない気がします。根拠は2012年4月1日記事参照

2ヶ月前、ある方からバレンタインのお菓子と「お返しは小説で」というお言葉をいただいていたのですが、ホワイトデーの時期を1ヶ月も過ぎてから、ふいにネタが浮かびました。
珍しいことに、イクスと詩乃の組み合わせです。


「チョコレートを配り歩く人間と三回遭遇しましたが、あれはなんですか」
 青年の疑問はもっとも過ぎて、イクスは思わず苦笑した。
 バレンタインデーは、楽しいことに目がないとある騎士と、古今東西お菓子が大好きな女性たちが推し進めた結果、院の行事の一つとして定着している。しかし元を質せば、特定の世界の限られた地域で行われている、ローカルな行事である。
「お世話になった相手や身の回りの人に、女性がチョコレートを主とする菓子を渡すイベントだな」
 元は恋愛に関わるイベントらしいが、院ではその点はあまり重視されていない。
「断ると角が立つから、有難く受け取って、食べられないものは後で談話室に置いてくれ」
(以下、執筆中)


詩乃の敬語が少し新鮮です。もっとも、彼は相手に応じて口調を変えるキャラクターなので、年上の先輩であるイクスが相手なら自然と敬語になります。
ラメセスに対しては、最初からタメ口だった気がしますが……実年齢が年下であることを、なんとなく感じてるんじゃないでしょうか。そうでなくとも、敬意を払う必要は感じてないのでしょう(笑)。

五十音順キャラクター・ショートショート【わ】
→ルールは2012年12月17日記事参照


 悪い男とはつまり、イイ男ということだ。
「そういうわけですから、世間のご期待に添えるよう、悪事に勤しむとしましょう」
 ――と、薔薇の騎士連隊第十三代連隊長は語った。
 この不良中年は、イゼルローン要塞赴任以来、教育関係団体の奥方たちから公序良俗を乱す「悪い男」の代名詞として語られている。しかしそれに堪えるどころか、名誉の勲章にしてしまうのが彼らしいところだった。

悪い男
……ワルター・フォン・シェーンコップ(小説「銀河英雄伝説」)


銀英伝キャラが書けるような大人になりたいです……。
まとめは、また明日。

五十音順キャラクター・ショートショート【ろ】
→ルールは2012年12月17日記事参照


 労働を知らない手だ。
 娘の白い手を取り、ロクスはそんな当たり前のことを考えていた。
 天使が鍬を握って土を耕したり、冷たい水で洗濯をするわけがない。混沌の時代を逞しく生き抜いた地上の人間と違う、ただ美しいだけの手。
 それは幼い頃に教会に引き取られ、聖書より重いものを持たずに育った自分といい勝負だ。
 そんな彼と彼女の白い手だけが、癒しの力を宿している。
 ロクスはその奇跡を不思議に思った。
 己の手は、触れただけで他人の怪我や病を癒す。けれど、自分の痛みはどれほど触れても癒すことが叶わなかった。
 彼女の手は、誰も癒すことがないらしい。けれど、ロクスがずっと抱えていた痛みを、この手は溶かすのだった。

六根清浄の奇跡
……ロクス・ラス・フロレス(ゲーム「フェイバリットディア 純白の預言者」)


ロクスは割とロマンチストだと思います。
骨格がしっかりしているし、ロッドで殴るので、それなりの手をしてそうですけどね。労働階級とは違うでしょう。

五十音順キャラクター・ショートショート【れ】
→ルールは2012年12月17日記事参照


 冷静だった。
 ――と自分の振る舞いを採点し、安堵したときだ。
「お前でも、王妃様には緊張するのか?」
 彼に見破られていたと知って、レイシスは秘かに驚いた。
 王宮内でただ一人、レイシスのことを友とかライバルとか呼ぶその男は、衛兵長でありながら剣より花束を持って歩いていることが多い、典型的な貴族である。今日は警備を兼ねているのか、立派な剣を腰に差していたが、藁束しか斬ったことがない剣が何の役に立つだろう。
 ある意味で彼は、レイシスが思う“インフェリアの平和”を証明する存在だった。呆れたり苛立ちながら、ほっと安心もさせられる。
 考えてみれば、彼の前では気を抜いて、心の鎧を外していたかも知れない。
 ならば彼が見破ったのではなく、自らが告白していたようなものだ。
「そうだな、緊張はするさ」
 仕方なく、レイシスは笑って認めた。
 でも、その緊張が心の奥に潜む憎しみを抑える為であることは、墓の底まで持っていく秘密だった。

零下の憎悪
……レイシス・フォーマルハウト(ゲーム「テイルズオブエターニア」)


本当はロエン様に「ろ」のお題で登場して頂く予定でしたが、その前の「れ」で苦戦して、TOEを使ってしまいました。
レイシスは、母親を愛していたようだから、本心では王妃を憎んでいたのではないかなと思います。ただ、復讐しよう等と考えるタイプではなかったので、ただ何時までも消化できない憎悪があるだけ。
レイシスみたいな出来過ぎた人物は書き難いので、ロエン様を書きたかった(苦笑)。