• 2011年10月09日登録記事

宝塚大劇場公演「クラシコ・イタリアーノ/NICE GUY!!」11:00回を観劇。
所用で大坂まで行ったので、初日は逃しましたが、しっかり観て来ました。

一幕がミュージカル「クラシコ・イタリアーノ −最高の男の仕立て方−」。
期待値を越えた出来で大満足しました。観劇後にとても気持ちよくなれる、良い作品です。
とてもオーソドックスで、奇を衒った演出があるわけでなく、割と淡々と進みます。
でもテーマはちゃんと伝わってきて心に残るし、登場人物たちが自分の筋を通していて、他者を一方的に攻撃することがなく、主要人物は作中に人間的成長を遂げ、人間讃歌に溢れている。コメディ部分には思い切り笑って、スーツ姿の男役勢の格好良さに痺れて、職人たちの想いに涙して、ラストはほっこりする……。
それで充分でした。
過去の植田景子先生には「小劇場サイズは佳作、大劇場はイマイチ」という評が付いて回っていましたが、今回は過去の作風を保ったまま、「こういう地味な作品でも大劇場で見せられる」と証明したように思います。

大空祐飛主演作なのに、戦争はなく、人死にがなく、不倫もないと言うだけでも、個人的には凄く嬉しかったですけれどね(笑)。

キャストごとの細かい感想は東京公演になってから書こうと思いますが、甘口辛口でそれぞれ1つだけ。
まず、絶賛したいのはマリオ@北翔海莉。難役をしっかり見せるさすがの技巧。サルヴァトーレとマリオの間に、これまで一緒に過ごして来た時間が確かに感じられ、別れのシーンには泣かされました。ナポリに戻ったサルヴァトーレは、マリオと再会して、また一緒に飲みに行ったりしている筈だと心から願います。
次に、辛口がジャコモ@十輝いりす。引き出しにない役を演っている感がありました。もっとサルヴァトーレを追い詰めるような怖さが欲しかったです。悠未ひろと逆の配役の方が合っていたかも。東京までにもっと大きく、迫り来る恐怖が出てくることを期待しています。

あ、冒頭のレニーのアドリブは「倉岡銀四郎」で「肉喰わねぇか、こら」でした。

二幕がショー・アトラクト「NICE GUY!! −その男、Yによる法則−」。
普通に良いショーなのですが、期待値が高過ぎたせいで、なんとなく肩透かしでした。

前回の「ルナロッサ」が月+中近東というテーマで、全体的に一つの作品になっていたのに対し、あれこれ要素が詰め込まれていて少し散漫な印象も受けました。
「Yearning(プロローグ)」が思ったほどキャッチーでなくて、続く「Young Blood(イケメンオークション)」もコメディさ加減が苦手な雰囲気で盛り上がらないまま観ていたところに、「Yaw(薔薇)」で突然圧倒され、洒落た「Yellow jacket(中詰)」になって楽しくなり、「Yonder(風)」に感動。「Yawp(セクシャル9)」でテンションが最高潮に盛り上がり、ところが大階段前のフィナーレに突入するとまた地味な印象に戻って、デュエットダンスがないままパレードに突入で、なんだか気付いたら終わりになっていた、という感じです。
まだ始まったばかりなので、プロローグとフィナーレはもっと良くなると期待しています。
イケメンオークションだけは、私の好みと懸け離れているので難しいな……。

ショーに対して微妙な印象を抱いた原因の一部は、衣装にあるかも知れません。
「Apasionado!!II」で、藤井先生の衣装センスは私の好みと合わないと感じていたのが、今回で決定付けられました。
男役の魅力を出すショーと銘打つなら、黒燕尾が欲しかったです。

でも、期待値が異常に高くなり過ぎていただけで、思い返してみると普通に良いショーなんですよね。
特に好きなシーンは、「Yaw」と「Yonder」です。
「Yaw」は耽美の世界。伯爵夫人@美穂圭子の高低自在な歌、少女@すみれ乃麗の可愛さと、一瞬だけ観られる軍帽を被った姿の不思議な怖さ、ナイスセクシャルY@大空祐飛から漂う謎のエロオーラ、そして彼等に翻弄され、最後は逆様に張り付けられる逃亡者@凰稀かなめ、とすべての要素に酔いしれました。
ただ、薔薇の花が散る演出はさすがにやりすぎな気がしますよ。
衝撃が強過ぎて上記の4人しか観られなかったので、東京では、棘のメンバーも1人ずつ確認したいところです。
「Yonder」は、コーラスの人数が少ないのに驚くべき声量とハーモニーに圧倒されました。天羽珠紀のソロも、今まで知らなかった高音と素直な響きに、改めて感嘆しました。

なんにせよ、両作品共、東京で再び観られるのを楽しみにしています。