- 分類読書感想
桐野夏生著「女神記」
【あらすじ】
貧しい島の巫女の家系に産まれたナミマは、島の男マヒトと恋に落ち、密かに交わって子を宿す。しかし姉カミクゥが大巫女となると、ナミマは夜の巫女として、島の禁足地に閉じ込められた。ナミマは、島の掟から自由になるためマヒトと共に脱出し、船の上で娘を産む。だがある夜愛し合っていた筈のマヒトに絞め殺されてしまった。海底に沈んだナミマの魂は黄泉の国に辿り着き、夫への怨みから毎日千人を殺し続ける女神イザナミと対面するーー
南の島がメイン舞台なのに明るさはなく、陰陽や禁忌がクローズアップされた島の祭祀に、日本神話と組み合わされている、陰鬱な湿気のあるお話。
黄泉の国の巫女ナミマとその周辺の物語に関しては、非常に面白かったです。ナミマの語り口にも惹き込まれました。
が、もう一方の軸である二神・イザナキとイザナミの物語は、少々難解というか、イザナキが「八岐那彦」という不死の人間になっている前提部がボカされ過ぎていて、更に宇為子と入れ替わって死ねるようになる、という下りに納得できず躓きました。
イザナキ当人は納得して満足のうちに死んだけれど、残された夜宵やナミマ、イザナミにとって、救いはあったのでしょうか。男の都合に振り回される女たちで終わったような気がします。
本作には、ナミマ以外のイザナミに仕える巫女として、稗田阿礼が登場します(女性説採用)。「為人聡明 度目誦口 払耳勒心」というフレーズ通り才気煥発だけれど、少し調子に乗って喋り過ぎてしまうような部分が、凄く「らしい」キャラクターで面白かったです。