- 分類読書感想
小川糸著「食堂かたつむり」
【あらすじ】
恋人に裏切られ無一文で故郷に戻った倫子は、大嫌いな母に借金をして食堂を始める――
あらすじを纏めるのが難し過ぎ、諦めました。テーマと物語の盛り上がりが別なのが原因だと思います。
そしてあらすじと同じくらい、評価に悩む作品でした。
軽く読める良さや、現実感のなさがメルヘンチックで面白いと思います。色々な料理が出てくることを期待して読んだので、その点では満足できました。
ただ、エピソードが漫然としているので、恋人に全財産を持ち逃げされた話、失語症、食堂での出来事、母親との確執、と事件が色々あるのに全部バラバラの要素で、最初と最後で巧くお話が繋がった感が感じられないのが残念でした。
例えば、愛(恋人)の喪失による声の消失を、愛(母親)を得たことで取り戻したなら、多少まとまりがあったと思うのです。もっとも、倫子が淡々としているので声を失ってしまうほどの恋だったという印象も薄いのですけれどね。
豚のエルメスや、拒食症リスの描写が可愛い反面、人のキャラクターは総じて奇抜で、正直友達になりたくないなと思いました。
特に母親ルリコがエキセントリックでしたが、その娘である主人公・倫子も、確かに彼女の血を引いているな、と思える視野の狭い印象があったので、一人称小説なのに主人公がよく判らないという据わりの悪さがありました。
最後に……家畜と言ってもペットにしていた動物を、わざわざ屠殺して食べるという行為はビックリしましたが、責任をもって食べた点は良かったと思います。殺さなければ、そんな責任も生じないですが……。