上田早夕里著「ショコラティエの勲章」
【あらすじ】
老舗和菓子屋に勤める絢部あかりは、2軒先の人気ショコラトリーで万引き事件に遭遇したことを切っ掛けに、ショコラトリーのシェフ・長峰と知り合う。長峰との交流を経て、あかりは菓子職人の矜持を知っていく。
パティシエの世界を舞台とした“日常の謎”ミステリと聞いていたので、和菓子屋から始まって驚きました。
職場が和菓子屋であることや、御菓子蘊蓄が多いことなどは「和菓子のアン」と似ています。しかし、主人公のタイプは真逆。本作のあかりは、無闇に詮索好き且つ周囲の人々に対して偉そうに見えて、好感を抱けませんでした。超頑固な長峰シェフは、理屈っぽくて面倒くさい人だけれど、一貫していて格好いいです。
あまり後味が良くない情念や苦みのある展開もあるので、リアルではあるけれど、個人的には好みから外れる話もありました。が、最終話の締めが良いので、読了感は清々しかったです。
スイーツの描写は非常に巧みです。味を想像して口の中に甘みが広がり、チョコレートやケーキが食べたくなります。
また、職人の矜持や魂も込められていて、御菓子を食べるにも色々考えさせられる気がしました。