• 2013年10月15日登録記事

森岡浩之著「星界の紋章」全三巻

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
地上人でありながら宇宙帝国の貴族になった少年ジントは、貴族の義務である兵役に就くため、首都を目指した。しかし、搭乗した戦艦は敵対国家に襲撃されてしまう。ジントは同乗していた訓練兵・皇帝の孫娘ラフィールと共に脱出し、宇宙空間の戦いには強いが、地上の常識には滅法疎い彼女と助け合いながら、帝国の首都まで帰りつく。

銀河を掌握しようとする帝国を舞台とした、ボーイミーツガールと星界戦争。
強い少女とおっとりしているが骨はある少年という鉄板のペアで、展開も非常にオーソドックスですが、王道の面白さを味わえます。
強いて難を言うならば、ジントは父親との確執がキャラクターとしての主題になりそうだったのに、親子の直接の対話がないまま、父親を退場させてしまったのは勿体ないと思いました。
一読すると、ラフィールのキャラクターが強烈な印象を残しますが、実際は語り手である主人公ジントが、世界と読者を繋ぐ巧い役割を果たしていると思いました。

ちなみに、表紙絵からライトノベルだと思っていたので、文中に挿絵がないのは意外でした。
独自の用語とルビ振りの多用はライトノベルっぽいですが、或いはSF界ではこういう文体が主流だったりするのでしょうか。「マリア様がみてる」の紅薔薇のつぼみ(ロサ・キネンシス・アン・ブゥトン)とかを思い出しました。