• 2010年08月12日登録記事

三浦しをん著「人生激場」「仏果を得ず」「まほろ駅前多田便利軒」の三連発。

良い意味でも悪い意味でも、すべて大変軽くて読み易い作品でした。
記載の順で読みましたが、順番は失敗だったかも知れません。
と言うのも、最初に読んだエッセイ「人生激場」のせいで、肝心の小説作品の方を「BLっぽい……」と思いながら読む羽目になってしまいました。
取り上げているエピソードの半数程は共感するところが分からなかったのは、年代の違いでしょうか。

「仏果を得ず」は文楽に青春を捧げる若者の物語。かなり下調べをされたのでしょうが、文楽の世界の裏側が覗けて面白かったです。
現代の日常生活から、文楽の表現のアプローチを学ぶと言う展開は、演劇物などで良くある展開だと言う事もあり、あまり馴染みのない文楽の世界にすっと入っていけました。
文楽の名作が多々紹介される点も、勉強になりました。実際に観てみたくなる読了感も、演劇物と似てるかな。

「まほろ駅前多田便利軒」は、男二人の友情と再生の物語。直木賞を穫ったのはこの作品で、漫画にもなっているんですね。むさ苦しい同居生活を描きながらリアル感が薄く、ファンタジーになってるあたり、漫画的なので良いメディアミックスではないかと思います。
過去の事情から生じた感情を描写しながら事情には触れず、後から明らかにすると言う手法が、読み手の苛立ちでなく想像を掻き立てて先へ読み進めさせる動機になっている辺りは、見習いたい点でした。
裏稼業の人物を肯定的に描写されているのは、キャラとしては好感が持てても、多少疑問を感じる部分でした。が、ルルとハイシー(って、今気付いたけれど市販薬の名前?)のキャラは結構好きです。