• 2012年11月13日登録記事

中島らも著「ガダラの豚」全3巻

巻を追うごとに印象がガラリと変わるお話でした。
1巻は、新興宗教に嵌った奥さんのために教祖のトリックを暴く話。私はマジック好きなので、自称「超能力」を巡るミステリは興味深く、楽しく読めました。ところが、このまま疑似科学の種明かしが続くことを期待して読んだ2巻では、逆に呪術が現実にあるものとして描かれ、人死まで発生します。1巻のあっけらかんとした空気に対し、2巻は忍び寄る不安と生理的嫌悪が凄まじく、恐怖を払拭する為に急いで3巻へ取り掛かることになりました。
3巻は、頼れる人がどんどん奇怪な死を遂げたり狂っていく描写で半分くらい泣きそうになりながらも、最後は大団円でホッと一息吐いたのでした。
ミステリだったり、家族愛に満ちたお話だったり、怪奇小説だったり、荒唐無稽なエンターテイメントだったりと、一つのカテゴリに縛られない器の大きさが、この作品のパワーだろうなと思います。
でも、実は結構怖がりな私は、たぶん再読できないですね。
「呪い」がアフリカでどのように社会的役割を果たしてきたかという民族学や、マジックのネタをバラす蘊蓄部分はとても面白かったです。