• 2010年04月12日登録記事

「最終封印」もかなり鈍行だけれど、あれはライフワークだから良いとして、リオン本は本当に2011年までに終わるのでしょうか。

いかにも初稿クオリティという感じの粗さですが、抜粋。


 その時、時計盤の面が沈んだ。沈んだのはそれだけでない。大気が鉛と化したように重くのしかかり、一行の身体を地に伏せさせた。攻撃の術が放たれたわけでない。ただ、威圧が彼らを押し潰そうとしていた。フィリアが這い蹲りながらか細い声を搾り、信奉する神に慈悲を求めたが、天へ届くにはあまりに儚い。仕舞いにその声は苦鳴に変わった。
「ここまで来て――」
 リオン・マグナスは歯噛みした。彼もまた、立ち上がり挑もうとする意志が四肢に伝播することはなく、伏せた身を地から引き離すことが適わない。左手が強く掴んだ細身剣だけが、彼の闘志を映して震えていた。
 グレバムは哄笑をあげていた。勝利を確信した狂喜と嘲りを満面に浮かべ笑う彼の声は、そのまま鳴動を生んだ。
 不意に、影が落ちる。
 そのことに初めに気が付いたのはリオンだった。神の眼が、触れられるほど近くにある。
 少年の視線を追い、頭上に眼をやったグレバムが気付いた時には遅かった。掲げた長剣のレンズが神の眼と接触する。重なり合ったレンズの間から光が弾け、稲妻と化して降り注いだ。間近く閃いたその雷電は、男の手から剣を奪った。無手の掌が神の眼に触れる。
 本当の異変が起きたのは、次の瞬間だった。
「制御が……!」
 それ以上、意味のある言葉が続けられることはなかった。
 グレバムの右の手は、二の腕まで神の眼が放つ光に飲み込まれていた。光は、そのものが力であった。皮膚が裂け、骨と臓器をあらわにし、血の一滴に至るまで溶いていく。今や、悲鳴をあげ身を伏せるのはグレバムの方だった。隻手で顔を覆い蹲った男の髪を、肩を、背中を、光は容赦なく突き刺し、灼き尽くす。


オリジナル版準拠シーン。
……リメイク(PS2)版のファンダリア時計塔の決戦って、どういう終わり方だったんですっけ? 神の眼の暴走はなかったんですよね。
プレイしたのはリメイク版の方が最近なのに、オリジナル(PS)版の方が印象に残っているあたり、自分がオリジナル版から受けた影響は本当に大きいんだなと感じます。