• 2011年09月06日登録記事

恩田陸「チョコレートコスモス」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
偶然観た演劇界のサラブレッド東響子の舞台に「なにか」を感じた飛鳥は、その正体を知る為に演劇の世界に飛び込んだ。類い稀な集中力と観察力を持つ飛鳥は演技の才を開花させる。やがて、オーディションで響子と共演した飛鳥は、2人で舞台の奥に広がる「現実」の境地に達する。

面白かったです。一気に読み切ってしまいました。
様々なタイプの演劇人のエピソードが並行して描かれ、最後にある舞台のオーディションで一つに集約されると言う構図。
作中に描かれるオリジナル舞台が面白そうな題材だったり、オーディションで演じられる古典も一人一人の演出が練られていて、舞台として面白そうに読めるのが良いです。
物語自体のオチは割と簡単に読めますけれど、このお話で重要なのは展開ではなく、女優たちがオーディションで与えられた課題をどう演じてみせるか、なので予定調和な展開は気になりません。演劇を齧っていた人間からすると、いきなりでそんな巧く出来るものか!と思うけれど、女優たちが色々な手法でクリアするのは痛快でした。

ちなみに、色々な要素が「ガラスの仮面」と被るのですが、後書で作者自身がモチーフとして肯定していました。飛鳥と響子は、相思相愛なマヤと亜弓さんと言う印象です。
でも個人的には、飛鳥と響子が演じる予定の芝居については、「ライジング!」作中の「メリィ・ティナ」をイメージしました。

一つだけ難点を言わせて頂くと、「チョコレートコスモス」と言うタイトルは頂けません。
これは響子と飛鳥用の新作芝居のタイトルとしては脚本家が付ける題なのですが、正直に言って訴求力を感じません。コスモスの儚い美しさは響子と飛鳥のイメージとも合わないので、ラストに肩透かしでした。

続編「ダンデライオン」が連載中だそうです。三部作構想らしいですけれど、完結は一体何時になるのか。
とりあえず、続編が一冊に纏められたら是非読みたいと思います。