• 2011年09月05日登録記事

今回は、ナジモヴァ&ナターシャ語りに終始しています。

【1幕8場 椿姫のセット】
「椿姫」の撮影中、ルディに母親の死を伝える電報が届く。傷心のルディを、共演女優ナジモヴァの専任デザイナー、ナターシャが「母親の魂に会わせる」と誘う。

開幕から40分近く経っていますが、ここで2人が初登場。
まずは、ロシア人女優のナジモヴァ。2009年「逆転裁判」以降の純矢ちとせが演じた役の中で、一番好きです。元々やや大袈裟な台詞回しで「大芝居」気味の持ち味が、ロシア訛りとサイレント映画の大女優としての風格を出すのに一役買っていました。脚本上のキャラクターとしても、結構美味しいですよね。
そして、ナターシャ。もっと女装風味になるかと思いきや、綺麗でした。このシーンのナターシャの服が格好良くて、好みです。上着を脱いで、インナーがどうなってるのか見せて欲しかったなぁ。
DVDを見ると、この頃から一方的にジューンを敵視してるんですね。ジューンがナジモヴァに挨拶すると、顔を会わせたくないように去るのに、やり取りはじっと観察しているところなど、細かい芝居が興味深かったです。

この作品における「ナターシャの才能」については、観劇中に捉え方が何度も変わりました。
最初は、ルディが感じた通り「天才」なのだと思っていました。しかし何度も見直す内に、実際は違う気がしてきました。
ナジモヴァのドレスは着付け途中と仕上がりに大差がないし、この後の「シーク」「血と砂」の衣装はもっさり気味。舞台では遠目で綺麗だと思ったアルマンの衣装も、DVDで細部を見ると刺繍がゴテゴテしていて、悪趣味の一歩手前なんですよね。
セットに当てる照明はナターシャが指定した色の方が断然綺麗なので、色彩感覚が優れていたのは間違いないのですが。

この作品はフィクションですが、史実においてナジモヴァは同性愛者だったと言われています。
それを知って観ていると、この舞台でもナターシャはナジモヴァの愛人なのでは……と感じました。大女優が気に入っている愛人だから、デザインを任されているし、周りからも賞賛されているのかな、と。
最大の肝は、ルディが、ナジモヴァを「ナジン婆さん」と呼んで怒らせた瞬間。ナターシャが大笑いすると、途端にナジモヴァも機嫌を直します。
日頃クールな愛人が声を上げて笑う姿を見られたから、ルディを気に入ったように思うのですが、穿ち過ぎでしょうか。

【1幕9場 ナターシャ・ラムボアの家】
ナターシャが紹介した占い師メロソープはルディの母の霊と交信し、「女が母親の代わりを果たす」と予言する。ルディはナターシャの誘惑を拒めず、一夜を過ごす。

粗筋で、メロソープの占いをどうまとめるか悩みました。ルディ視点で物語を纏めた時に、ナターシャが聞いた占いの結果は彼の耳に入っていない&影響していないと思いましたので、このようにしてみました。
……しかしこの予言を採用すると、ジューンは結局、最後まで「お母さん」ポジションだったと言うことになりますね(苦笑)。
2011年版花組「ファントム」では「母親の愛と、恋人の愛は違う」と感じたのですが。もっとも、ルディが欲していたのは「家族」なので、「女(妻)が母親の代わりに家族になる」と読み取れば良いのかな。
ルディ自身は占いを信じていなかったと思いますけれど、助言としては効いていたのだと思います。

メロソープ自身には悪意も善意もないと思うのですが、声に毒がある役者なので、数々の占いが指す物を色々考えさせられます。
DVDの収録回は、占いの途中に骨が弾ける演出が巧く働かず、どういう仕掛けか確認したかったのでちょっと残念。メロソープが盆を叩いて崩していたのでしょうか。

ルディ、ナターシャ等は前場から衣装を変えて登場。
ルディとナジモヴァは前場の衣装は「舞台衣装」なので着替えて当然として、ナターシャも着替えている辺り、美意識の強さを感じます。
この公演は頻繁に衣装替えがあって、楽しいですね。

アラバマ生まれのアメリカ娘ウィニフレッド・オショーネシー、と言う正体を話すことでルディの心を掴んだナターシャ。
彼女は恐らく、前場で「ロドルフォ・グリエルミ」の名を聞き、ルディが芸名であることに気付いたのだとは思います。それで、自分と同じ(本名の自分を脱する為に名前を変えている)と思ったのが、大間違いだったわけですが……。

それにしても、メトロ所属のナジモヴァの専属デザイナーが、パラマウントの副社長と親しいのは何故でしょうか。
ジョージもナターシャとパラマウント社の繋がりを知っていたようですし、元はパラマウントで働いていて、後からナジモヴァの専属になったのでしょうか。