• 2010年01月07日登録記事

 炎!
 ロイドは咄嗟に腕を交差して頭部を守ると、身を沈め横跳びに転がった。目を瞑ったまま世界がぐるりと回転し、暗闇の中、鮮やかな赤い火の気配が傍らを通り過ぎていく。
 やり過ごした、と思った瞬間、片肘を熱息吹が掠めた。
 ──やられた!
 触れたのは僅かな部分だった。しかしそこから走る熱は半身を支配し、ロイドは悲鳴を上げると、立つと言う単純な動作も忘れ、焼けた腕で頭を抱えたまま地に伏した。熱さは痛みだった。魔性の炎は、日頃触れていた竃の熱気など児戯に等しい激しさで、ロイドを灼いた。
 牙を向いた魔物を前にしている事実は、最早脳裏になかった。そのまま一呼吸の間も蹲っていれば、子供の身体は魔物の胃に収まっていたことだろう。
 その時、暖かい手の平が肘に触れた。


38話、クトゥグハ戦で丸々使いますよ。
今はファーストエイドをどう表現しようかなぁと、悩んでます。取り敢えず、「手当」のイメージで描いてみようと思っているのですが、纏まらなければ変わるかも。