• 2013年01月07日登録記事

内館牧子著「十二単衣を着た悪魔」

【あらすじ(最後までのネタバレあり)】
ある日突然「源氏物語」の世界にトリップしたフリーターの雷は、偶然持っていた源氏物語の粗筋本を使い、未来を予測する陰陽師「雷鳴」として弘徽殿女御に仕える。次第に弘徽殿女御とその息子に肩入れし、彼らの為に働く雷だったが、再び不思議な現象で現代に戻ってしまう。あの世界に戻りたいと願いつつ叶わない雷は、やがて源氏物語の研究者となる目標を持ち、勉強を始める。

平安物と見せ掛けて、中身は完全に現代物でした。
トリップ物は素人小説で大量に読んでいることもあり、商業小説で読むのは不思議な気がしました。設定は粗いし展開はご都合的。現代の若者や文明社会への批判的な描写はクドく、主人公が使う若者言葉も気恥ずかしい。
源氏物語の粗筋を追うために、やたら出来事が詰め込まれているのも気になるところ。
でも、全体としては面白かったです。
源氏物語を、ごく普通の人たちのゴシップ的なお話にまとめている軽い視点が、この作品の良い所ですね。現代的解釈の源氏物語として、楽しめました。

作者の偏愛が入っているだけあって、弘徽殿女御は格好良いです。息子の一宮も良いキャラクター。但し、他の人物のことは結構悪し様に語られているので、好きな方には辛いかも知れません。