- 分類読書感想
三島由紀夫著「豊饒の海 第一巻・春の雪」
【あらすじ(最後までのネタバレあり)】
新華族松枝家の令息・清顕は、筒井筒の仲である綾倉聡子が皇族と婚約したことで「禁断の恋」に美しさを感じ、彼女と関係を持ったうえ妊娠させてしまう。両家は聡子を堕胎させ素知らぬ顔で皇室に嫁がせようとするも、聡子は剃髪して世俗との関係を絶つ。清顕は聡子と追って寺を訪れるが、面会を許されぬまま肺炎で死ぬ。
麻生家の本棚には三島作品がなかったので、本作が三島ワールド初体験です。
三島作品の主人公は「屈折している」と表現されていますが、清顕は有体に言えば面倒くさい究極の自己中男だと思いました。
一方の本多は、結構分かるなぁと思う青い人物像で、読んでいて面映ゆかったです。
文章は、巧みな表現と美しい日本語に戦慄しました。装飾は過剰だけれど、本質が伝わらず読み難いということはないのが意外。
凄い描写力によって作り出される耽美の世界ですね。
物語の筋だとかテーマだとかは関係なく、ひたすら美しさを求めているようにも感じました。
面白かったか、なにか感じるモノがあったか、と問われると悩ましいところ。
ちなみに、この「春の雪」を原作とした舞台が、昨年秋に宝塚月組の若手で上演されています。私は観劇しなかったけれど、ポスターは何度か見掛けたので、読書中の清顕は明日海りおの顔で再現されました(公式サイト参考)。
※この舞台写真は雰囲気があって凄く良いですよね。雪が紙吹雪ではないようで、どういう技術を使ったのかも気になります。