ウスパー著「この世界がゲームだと俺だけが知っている」
【あらすじ】
廃人ゲーマーの相良操麻は、ある日ゲーム〈New Communicate Online(通称:猫耳猫)〉の中に入り込んでしまう。だが猫耳猫はただのゲームではない、バグ満載の大人気クソゲーだった! バグと制作者の悪意(お茶目)に満ちたゲーム内を、ソーマは仕様を逆手に渡り歩いていく。
全体的に捻くれているけれどゲームに対する愛があり、叙述トリックに心地好く騙される作品。
「小説家になろう」連載中、人気オンラインノベルの書籍化。
書籍化した場合はネット公開を取り下げる(または一部をダイジェスト化にする)作品が多い中、現在も下記アドレスにて1話から最新話まで閲覧可能です。
http://ncode.syosetu.com/n9078bd/
私も連載版の読者です。
オンラインで無料で読める小説を、わざわざ書籍で買うユーザーがいることが不思議だったのですが、今回、実際に購入してしまいました。
大ボリュームの書き下ろし外伝(※)も然ることながら、書籍で手元に置いておく価値は「コンピューターに電源を入れないで読める」「最新話を読みつつ過去の伏線確認ができる」という点でしょうか。
逆に、書籍化によるマイナス要素は「イラストが付く」ことかも知れません。VRゲームという舞台上、もう少しリアル寄りの造形をイメージしていたので、作品と絵柄および各キャラクターイメージが異なりました。
主人公が異世界にトリップするお話は昔からありますし、トリップ先をTVゲームした作品も珍しくありません。実は私が初めて1人で完結させた創作小説も、ゲーム内トリップ話でした。
幾多のトリップ物と一線を画す本作特有の面白さは、トリップ先がただのゲームではなく、「くそゲー」であるということ。主人公が仕様とバグと盲点を利用し、正々堂々と邪道で攻略するという「いい意味で酷い」面白さに尽きます。
小説を読んでるのに、実際のゲームプレイを見ている感覚に近いのです。ゲーマーであるほど、「あるある」と共感したり「ない」と突っ込んで楽しめると思います。
(※)2巻収録の外伝自体は本来のゲーム「猫耳猫」の雰囲気が伝わり面白かったのですが、書籍版のみの読者だった場合、本編中で明かされる前にイーナのその後が分かってしまうのは勿体ないと思いました。