• 2013年08月12日登録記事

トルーマン・カポーティ著、村上春樹訳「ティファニーで朝食を」

村上春樹氏の翻訳は「グレートギャッツビー」の“old sport”が私の翻訳本に対する希望と合っておらず(2009年7月26日記事参照)、期待していませんでした。しかし本作に関しては、氏の淡々とした描写が、名無しの語り手が紡ぐ作品の雰囲気と非常に合致していて読み易かったです。
作品の評価は、ホリー・ゴライトリーの強烈なキャラクターに集約されます。自由奔放で破天荒、エキセントリック。彼女に惹かれるか、嫌うか、は読み手によって異なるでしょう。
同居していた猫との別れの場面が、非常に印象的でした。

表題作の他に短編3編が収録。
「花盛りの家」は予想を裏切る展開が続く不思議な作品。「ダイアモンドのギター」はゾクゾクする物悲しさがありました。一方で、評価の高い「クリスマスの思い出」がピンと来なかったのは、私が親族との繋がりが薄いせいかもしれません。