• 2014年06月04日登録記事

フィリッパ・グレゴリー著 加藤洋子訳「ブーリン家の姉妹」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
国王ヘンリー8世の愛人であるブーリン家の娘メアリーは、出産を機に平凡な家族愛を求めるようになる。一方、上昇志向の強い姉アンは、妹の出産の間に王を籠絡し、王妃をも追い出す。しかし男児を産めなかったアンの先には断頭台が待っていた。メアリーは凋落したブーリン家から離れ、平凡だが夫や子供たちと一緒の暮らしに踏み出す。

面白い!
本作のアン・ブーリンは、国王を籠絡し王妃を追い出し勝手に振る舞う悪女だけれど、この時代の女性としてできる範囲で上り詰めた上昇志向は凄いし、最終的に自分も男児を産めず追い詰められていく様は可哀想でもあります。何事もやり過ぎはいけないんですね。
先月の舞台「レディ・ベス」のアン像とは真逆で、そういう解釈の違いも面白かったです。
小説も勿論史実をそのまま描いているわけではありませんから、アンとメアリーの姉妹関係や、メアリーが産んだ子供がヘンリーの子かは分からないようですね。

キャサリン王妃の孤独、アンの凄まじい上昇志向、それに対するメアリーの嫉妬と愛。どれも圧巻でした。
終盤のメアリーは愚かで少し呆れたけれど、それも凡人である証左かもしれません。
女性陣が良くも悪くも個性的で格好いいのに対し、男性は全体的に印象が薄いです。ヘンリー8世がカリスマ国王から転落していく過程は、結構ゾッとしました。

しかし……この時代、メアリーとかヘンリーとかウィリアムとか同名が多過ぎでしょう。時々混乱しました。
歴史小説だから人名を変えるわけにはいかないけれど、創作小説だったらこんなに無意味に同名キャラクターが登場するだけで評価が下がるところです。

日本語訳は、少し引っ掛かる時があり、そこは残念でした。