• 2009年10月22日登録記事

北方謙三著「黒龍の柩」上巻読了。

新撰組モノ。
司馬遼太郎「燃えよ剣」では、土方歳三が山南敬助を徹底的に嫌っていると言うスタンスでした。
一方、本作では土方と山南を深く信頼し合う友としていて、描かれています。前半はかなり山南の行動にページが割かれているし、その後も山南の存在が人間関係に残っているなど、巧く使っていると思います。
切腹による効果の解釈等は、三谷幸喜の大河ドラマに似てるところもあるかな、と思います(あまり観てなかったから間違ってるかも知れませんが)。※

正に「歴史小説」と言うべき、思い切った作品作りで楽しめました。
例えば坂本龍馬暗殺は、正確な事が分からないだけに創作の余地があって面白いところだと思いますが、本作ではこれを坂本が発したアイデアが原因と設定しています。それは、“徳川慶喜を蝦夷に移して新国家を建国。内乱を避けることで薩摩・長州連合の日本本土と蝦夷の新国家の双方が力を付けることで、日本の植民地化を避ける”と言うもの。しかし、これを受け入れられない西郷により暗殺されるという展開でした。
旧幕府軍が北に逃げたことに、軍事的な理由だけでなく、政治的な理由があったと言うのは斬新ですよね。
新撰組としての剣戟よりも、政治的な立場や信念の方に比重があるためか、土方や近藤といったキャラクターも、司馬先生の切り口とはまた違ってなかなか新鮮でした。

しかし、下巻も読むかどうかは不明です。
上巻は、池田屋から、鳥羽・伏見の戦いを経て江戸に帰還したところまで。当然、この先はあまり楽しくない展開になると分かっているので、ちょっと覚悟が必要そうです。

※小説連載は2001年。