• 2009年10月06日登録記事

鈍足進行してましたが、25日に大江山花伝DVDが発売されるので、ちょっとテンポアップします。

【第2幕1場】
アメリカは大恐慌の中にあった――

トレンチコート姿のスコットが、最高潮に格好良い2幕開始。
しかし不安を掻き立てる音楽と振り付けで、暗い世界情勢を意識させられます。ドレスを着た女性のコロスが何を示すのか最初は分かりませんでしたが、恐慌の中でもアメリカンドリームを忘れられないスコットを現しているのかな。

【第2幕2場】
ゼルダの入院生活は続いていた。スコットはゼルダの精神を思い遣れなかった自身を悔やむ――

なぜか、ゼルダは、精神を病んでからの方が綺麗に見えて面白いです。
自分たちの生活を「正常でなかった」と語れるマトモな精神を持っていたのが、今後スコットの心にもたらす負担を増やしたのではないかと考えてしまいます。

【第2幕3場】
スコットは、ゼルダの入院費用や一人娘の学費等生活費の為に望まぬ短編を書く日々が続いていたが、遂に長編「夜はやさし」の執筆を開始する――

ここから登場する秘書ローラは、ちょっとオバさんちっくなキャラクター。ズケズケ物を言えて、演じるには一番楽しそうな役ですね。彼女は、電話の取り次ぎ等もしてるけれど、手書き原稿をタイピングすることが最大の仕事なのかな。
「時間的・経済的余裕がないと長編は書けない」と言う台詞が、売れない作家って厳しいよなぁと切実に感じます。

【第2幕4場】
出版した「夜はやさし」は大酷評を受け、今や大作家となったアーネストからは創作姿勢まで非難される。
スコットは、自分の命を燃やし続けていた“何か”が消えてしまったと感じる――

マックスは「仕事は結果」を持論にしつつ、スコット自身には慰めを与え、果たして本心は何処にあるのかと思わされますが、仕事人としてのマックスと、作家スコットの父としてのマックスと言う、どちらも内包しているのが実際のところでしょうか。スコットの背に手を伸ばすその手は、本当に優しいです。
アーネストは嫌味臭いけれど、結局は自分にも他者にも厳し過ぎるだけですね。二人の作風は全く違うので「こう書くべき」論はあまり意味を成さないと思うけれど、彼は絶対的に高い位置に自分を置いていないと堕落する恐怖があって、スコットを攻撃的に批判するのでないかな。
芸術家が大衆に媚びた作品を作ることを「身売り」と言うアーネストの表現は、凄くよく分かります。
原稿料前借り生活なのに、妻を高い病院に入院させ、娘を私立校に行かせているスコットは、正直アホ?と思います。アーネストから見れば、どう説明されようと完全に見栄としか思えない。いや、実際にただの見栄なんですよね。1幕ゼルダとの会話で「見栄っ張り」と言ってましたから。
で、「もうあんたと話す事はなさそうだ」と喧嘩別れしておきながら、この二人、史実ではスコットが死ぬまで文通してるんですよね。そう思うと面白いです。