• 2010年01月登録記事

 男は唐突に立ち上がった。
 余程慌てていたのか、肘をカウンターにぶつけた挙げ句、注いでやったばかりのブランデーをすべて零しながら。
「あの人だ……」
 茫然とした呟きが漏れる。誰何すると、彼、バーガーはようやく自失から脱し、長身を折り畳むようにして座り直す。だがなかなか口を開かず視線だけで辺りを見回す様子に、サッシャは察して耳を寄せた。
 それでも幾度かの躊躇があった後、低く潜めた、けれど隠し切れない熱量を持ってバーガーはその名を告げた。
「ヴィクター・ラズロが来てる!」
 それはあまりに著名な名である。
「ラズロ? あの? 本物か?」
 思わず問いを重ねると、バーガーは大きく頷いた。
「新聞記事で見た顔と一緒だ」
 この純粋なノルウェー人が大切に折り畳んで何時も持ち歩くスクラップのことなら、サッシャも知っている。親指の爪くらい小さな写真が載った、レジスタンスの雄の死亡記事。一体どれほど読み返したのか、擦り切れて顔など判別できるものでなかったが――
 その時、フロアからシャンパン・カクテルの注文が合図され、サッシャはグラスに角砂糖を一つ落とした。
 甘い音が会話を打ち切り、バーガーはもう一度カフェの入口に目を向けると、噛み締めるように呟いた。
「生きていたんだ!」
 その声の小ささに反比例するように、口調は強い。
 彼の眼差しが見ているのは、最早人でない。レジスタンスを導く希望の光だ。瞳が帯びた熱は頬に伝播し、自然と微笑みを浮かべている。ビターズの付いた指先を舐めて、サッシャが苦味に顔を顰めたのとは正反対に。
 ふと、フランス娘の肩を抱いたドイツ兵が視界の隅に映り、サッシャはわざと声を上げてバーガーに呼び掛けた。
「もう酔ったのか? 」
「あ、いや……」
 何時何処に「敵」の眼や耳があるか、彼等は注意を怠ってはいけない身だ。
 興奮を収めようと、バーガーの手がグラスを探して彷徨う。だが、彼が見付けたのは、大切なブランデーをカウンターが芳香ごと平らげてしまった跡である。
 サッシャは仲間の友誼に免じて、出来上がったシャンパン・カクテルを差し出した。
 彼等の明日を照らす光明に、乾杯するために。


祝・「カサブランカ」東京初日。
元々新聞記事の写真云々と言う下りを思い付いて、別のネタの中で使っていたのですが、そのSSは直ぐ仕上がりそうにないので、抜き出して変形。そっちのSSで生じた穴はどう埋めようかな。
なお、実際の舞台演出では、バーガーの仲間ファティマがラズロを見付けて、カウンターへ知らせに来てるらしいのですが、一回の観劇ではそこまで見てなかったのでご勘弁下さい。明日、自分で確認する前に書き逃げです。

現在地:ヒューバート加入まで

事前情報の段階では、ヒューバートが最終加入メンバーとは予想もしていませんでした。
寄り道が多いとは言え、20時間遊んでるから、結構な中盤ですよね……でも、ハロルド@D2よりは早いか。

巨大獣@TOVも吃驚なロックガガンの巨大さに、まさかと思ったらピノキオでしたね。再挑戦出来ないダンジョンかな?と思ったので宝箱に注意して進めましたが、多分取り零しがあるんだろうなぁ。
寄生虫の親玉以外は、道の通り方によっては戦わずに済むものもいましたが、ウロウロした御陰で、大体撃破したのでは。それに意味があったかどうかは分かりませんけれど、何となく達成感。
お守りがこの局面で出て来るとは予想外でした。首都でオズウェルの工作に巻き込まれたときの対策用とかかな〜と思っていたので。ヒューバートは中身を確認してなかったのか。日本人なら「お守りを開けてはいけない」と思うから納得ではあります。テイルズって、こういう点が実に日本製RPGですよね。
大輝石が砂漠化を進めている、と言うのは早々に導かれる推論ですが、それは大地の力を吸い取っていると言う事かな〜と思っていました。でも、王子に吸われた後、枯渇してしまうと言う事は違うのか、それともまた放置してれば砂漠化と引き換えに力を蓄えるのか。
オズウェルは、レイモンと同じ顔ポリゴンと言うだけで、小物に感じられて仕方なくなってしまったのですが、言動も甥似で吃驚でした。後半で関係してくるのかな。
王子に正気の部分が残っているとは思っていなかったので、この先ちゃんとアスベル達と対峙する時には面倒な事になりそう。友達だから攻撃しない、と言う制約からソフィを解き放つ方法はあるんでしょうか。

引き継ぎバグ警戒のため、セイブル・イゾレで、カルタイベントを発生させず通過。しかしよく考えたら、イベント自体は発生させても問題なかったんですよね?
レコード関係の問題がある「世界のパスカル」は入手しました。ゼロス@TOSの「ジゴロ」に比べたら楽勝ですね。

あけましておめでとうございます。
旧年中は、ネットの海の辺境へご足労頂き有難うございました。
今年もサイト共々よろしくお願い致します。

のんびり気まま進行で数年経ちますが、今年も温かく、偶に尻を叩きつつ見守って頂ければ幸いです。

そして、今年一年が皆さまにとって良い一年であるようにお祈り致します。