• 2010年09月04日登録記事

宝塚雪組公演「ロジェ/ロックオン」16:00(VISA貸切)観劇。
久し振りの雪組です。初観劇がこの組だったことから愛着を感じていや私ですが、なんと雪組観劇は2009年1月の「カラマーゾフの兄弟」以来でした。
白羽ゆりの後にトップ娘役に就任した愛原実花は、今回初めて観るくらいの勢いなのに、これで退団。公演期間が1ヶ月になったことによるサイクルの早さを、こんなところでも感じます。
ついでに、下級生は全然分かりませんでした。登場人物が少ない正塚先生の芝居で、逆に助かった感じです……。

今日の貸切司会は、開演前、休憩の抽選会、終演後で3つの衣装に着替えて登場し、大変会場を沸かせました。
今まで、こんな面白い司会に当たったことはなかったので新鮮でした。
ちなみに、抽選会のお手伝い生徒が舞羽美海だったのも驚きでした。まったく初見の生徒が現れることが多いので、娘役とは言えスターとして既に活躍している生徒が出て来たことで、少し得した気分です。拍手も、いつもより大きかったような気がします。

本公演は、男役トップスター水夏希の退団公演。
宛書き作品による退団公演は、どのくらい「サヨナラ仕様」かと言う点が気になるものですが、身構えていたほどサヨナラ演出はありませんでした。逆に、特別視しない辺りが水らしい演出と言えるのかな、と思いつつ、それでも芝居ラストで、本舞台に集合した全組子を銀橋から見つめ、去って行くと言う演出には揺さぶられました。

全体に熱演で、涙混じりの台詞が多かった芝居「ロジェ」。席のせいか、全体に台詞が聞き取り難くて、台詞劇である正塚芝居なので少し苦戦しました。
大道具も工夫されていたし、ブエノスアイレスのシーンは照明を巧く絡めたタンゴシーンがスタイリッシュで、全体に「格好良い」印象でした。
ただ、ロジェ@水夏希は外見に対して中身がかなり若い人物。ヒロインに当たるシーン等リアリティあるキャラ作りだったけれど、人物像として格好良いか?と問うと難しいところに感じました。ラストシーンが、彼がこれから本当にちゃんと独りの人間として生き出すスタートラインですね。
レア@愛原実花は、ある意味ロジェの人間性の被害者。彼女の好意がきちんと見えるだけに、ロジェからの仕打ちがちょっと胸に痛かったです。良い台詞は大体彼女のもので、作中で一番大人な人物かも知れません。
ちなみに彼女は台詞がしっかり聞き取れたので、発声を相当鍛えているのかな。歌は、タカスペの時に比べると普通に聞ける程度だったので、努力の跡を感じました。
ヒロインではなかったレア同様、二番手の役にしては物足りなかったリオン@音月桂。ロジェとどういう関係か説明されず、利用されてるように見えたのが敗因かな。リオンがロジェに好意を持っているのはこれまた分かるだけに……と思うと、ロジェの側が人の機微に疎いのがすべての問題なのかなぁ。
バシュレ@未沙のえるは、演技巧者であることは分かっていても、最近少し使われ過ぎかなと思っていたので、今回くらい控えめな存在感は良かったです。
組長のカウフマン@飛鳥裕は、悪人役ですね。外から見てる限りでは人柄が温厚そうに見えるので、悪役は似合わない気がしますが、ラストの立ち姿も少し悪そうな顔だったりして、興味深かったです。
3番手格スターのクラウス@早霧せいなは、実はこれが初見。ちょうど私が宙組を見始める前に異動して、以来雪組大劇場を観ていないのですね。シャープで格好良い姿で、クールな印象でした。
逆に「マリポーサの花」に引き続きコメディ役で、そちらの方面に才があることが判明したマキシム@沙央くらま。私は、早霧のシャープさより、沙央の少し幼い丸い顔立ちが好きのようで、ショーでも良く眼につきました。
シュミット@緒月遠麻は、出番が少ないのでファンは消化不良を起こさないか心配ですが、ある意味美味しい役なので仕方ないか。根が善良なのが一目で分かる感じで、良い配役だったと思います。ただ、最近回って来る役に対して、未だ声が少し若いかなとも感じます。
話のスケールが大きい(ナチ戦犯やユダヤ絡み)割に、実はコアはとても小さい(ロジェが一歩大人になる)内容なので、収まりはあんまり良くないのですが、登場人物の誰かに感情移入して観ると、凄い緊張感があって面白い芝居だと思います。推測して追跡し、途中に得た情報でまた推測が変わっていくのも面白い。でも同じ正塚×水コンビなら「マリポーサの花」の方が、パッと見て格好良かったですかね。

ショー「ロックオン!」はとにかく会場全体からの熱い拍手で、観客が参加している感が強いショーでした。プロローグから大盛り上がり。
色々な展開があったけれど、私はゴシック調の「Labyrinth」の場面が一番好みでした。黒孔雀@美穂圭子の歌も相変わらず素晴らしかったし、扇の小道具や、娘役が活用されていたのも嬉しいところ。途中、上手の柱風の大道具が少し倒れて、孔雀の復活シーン辺りで持ち直しましたが、あれは事故ですか?
ちなみに、日替わり演出シーンはラテンだったようです。
黒燕尾はロック調で、前回の「ファンキーサンシャイン」とはまた違う新しい境地。しかし群舞の揃う雪組なので、ロックでも綺麗でした。
こういう盛りだくさんなショーを観ると、1回では足りないなぁと心底思います。

私にとって水は、お披露公演を見たトップスターの初退団だと言う事もあり、時代の移り変わりを感じます。
男役・水夏希がこの世からいなくなることが、退団公演を観てもまだ少し信じられない気分です。