• 2015年02月05日登録記事

伊藤桂一著「落日の悲歌」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
没落した旧家の姫・万姫は、高麗の武人・秀民と結婚の約束を交わしたが、秀民が留守の間に倭寇の襲撃を受け囚われてしまう。自死も辞さぬ万姫だったが、海に落ちたところを倭寇の将・村上忠広に救われ、彼女を高麗に返す約束してくれた忠広に次第に心を許していく。心を移す女になることを恥じる万姫だったが、彼女のため再び高麗に攻め込んだ忠広が高麗軍に破れると「忠広の妻である」と名乗り、秀民の前で自死する。

宝塚ファン的には「我が愛は山の彼方に」原作本として知られている作品。
私の場合、先に「我が愛は山の彼方に」の知識があるので、高麗と倭寇の間の戦話であったことに驚きました。
(宝塚では、高麗と女真の戦いに置き換えられているため)

登場人物のうち、誰1人として幸せにならない結末なのですが、ただ哀しいだけでなく、どこか清冽な読了感があります。秀民も忠広も万姫も、それぞれが一番良いと思うことを成したからでしょう。
ただ、覚悟している3人と違い、知らぬ間に百虎を失い、1人倭に残される楚春は悲惨だと思いました。