• 2015年02月21日登録記事

江上剛著「円満退社」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
退職日を迎えた銀行支店長・岩沢千秋は、一日を恙無く終えて、退職金が満額支給されることを願っていたが、そんな日に限って行員の失踪、不正融資、利益供与、横領といった不正が次々と巻き起こり、金融庁の査察を欺くため四苦八苦する。ところが結局、銀行の合併により退職金支給自体が停止されてしまう。

あちらこちらで事件が起こるドタバタコメディ。
スピード感があり、登場人物たちのノリも良いため一気に読みましたが、面白いかどうかと問われると難しいところでした。
主要人物の誰も真面目に働いていないので、読んでいて不快なのです。
これがリアルなのかもしれませんが、私は自分の仕事に真摯でない人物に共感できないし、笑い飛ばすにはドギツイと思うのです。
主人公からして、事なかれ主義でうだつが上がらず、自分の退職金のため不正を隠すという到底応援できない行為に走っているので、まったく応援できません。
また、見せ場であろう金融庁の査察官とのやり取りは、元銀行マンである作者自身の金融庁に対する不満をぶつけているだけと感じて、少々食傷してしまいました。

夫婦の駆け落ち相手がお互いだったというオチは、それまでの展開に比べると随分大人しいオチのように感じるけれど、これで良いのだと思います。退職を迎えるサラリーマン諸氏への、これまでの人生で迷った選択もそれで良かったのだと言うメッセージが含まれているように感じました。