• 2013年09月登録記事

PSP「ペルソナ2 罪 -INNOCENT SIN-」総評です。
http://p2is.atlusnet.jp/

1999年に発売された同名ゲームのリファイン版。
「ペルソナ2 罰」の前準備として遊んでみましたが、ペルソナシリーズに対する心の敷居が取り払われると同時に、同シリーズに期待していたものと実物のズレ修正に最後まで追われた気がします。
第一に、意外とギャグ要素が多かった。第二に、意外と怖くなかった。
プレイ前は「東京魔人學園剣風帖」のような伝奇モノの暗い雰囲気をイメージしていたのですが、凄惨なイベントがある割に、ライトでポップでした。どちらかというと「シャドウハーツ2」の方が似ていたかも?

キャラクターは、多過ぎも少な過ぎもしないメンバーだったと思います。
栄吉は、達哉が喋らない分、何事かあると熱くなってくれる良い奴。過剰なナルシシズムがなければ、真っ当にいい男だと思います。
舞耶も、最初は妙に軽薄に感じたのですが、「お姉ちゃん」であったことが判明した頃から、メンバーの姉または母として存在感を増し、深い愛情を持った良い女性だと感じました。

ストーリー的には、序盤の栄吉を中心としたエピソードや、中盤の10年前の事件が判明した頃は勢いがあったのですが、後半、特にゆきのと淳が入れ替わった以降は盛り上がりに欠けました。終盤のエピソードで最もポイントとなる、淳の苦悩が私に伝わってこなかったのです。達哉が喋らない主人公であるため、淳に対する気持ちが見えてこなかった、という要素も大きいです。
ところで、子供時代に淳が達哉から譲り受けた腕時計はその後どうしたのでしょうね。達哉が淳から譲り受けたライターは頻繁に登場するのに、腕時計はまったく触れられないので気になりました。

酷評されていたローディングは、確かに頻繁ですがさほど時間は掛かりません。
個人的には、下記の細かいユーザビリティの欠落の方が気になりました。

  • BGMに対して台詞の音量が小さい。
  • 戦闘中に行動順を変えるとコマンド設定し直しになる。

戦闘時の悪魔とのコンタクトは面白いけれど、同時に面倒でもあります。なにより、ペルソナ召喚に必要なため完全に避けることはできないのが若干ストレスでした。
コンタクトしたくない時に、悪魔側から話し掛けられた時が一番腹立たしいのですよね。

結局のところ、始めて遊ぶペルソナ(女神転生)シリーズというものに対して、期待し過ぎたのかも知れません。
とは言えストーリー関係の印象は「罰」で変わるかも知れないので、ひとまず続編に進みます。

尾張一宮のイタリアン食堂&ワインバル「HANADORA」で飲んできました。
HANADORAは、愛知県に数件の店舗を構える居酒屋「寅“衛門」系列のお店。東京では渋谷に進出しています。
http://www.draemon.net/

雰囲気のある小さなお店。多くの客で賑々しく、とても勢いを感じました。
店内に入ると、ピザを焼く石窯がまず目に入り期待感を高めてくれます。ちゃんと期待に応えてくれる、もっちりしたピッツァでした。
その他のメニューも、心惹かれる食材や組み合わせで、色々頼みたくなります。

飲み物の方は、普通のカクテルも充分ありますが、やはりメインはワイン。グラスでもかなり豊富な種類が頼めます。
私が頂いた中では、アイスワイン(ウーデンハイマーキルヒベルク)が格別美味しかったです。貴腐ワイン(アルツァイヤーローテンフェルス)が大変リーズナブルな価格で驚きました。
ワインを手軽に楽しく飲むのに向いているお店でした。
機会があれば、渋谷道玄坂DRAEMONにも行ってみようかな。

月組公演「ルパン」SS。


 狩りは英国貴族の嗜みである。
 オックスフォード公の私有地にも、広大な狩猟場がある。毎年狩りの季節になると、公爵家の男や招待客が足蹴く通い、哀れなキツネたちを追い立てるのだ。だが、公爵の長子エドモンドが足を踏み入れたのは、これが初めてのことであった。
 最後にならなければ良いが――と一瞬心に浮かんだ弱気を、カーペットは直ぐに振り払った。
 彼の主人エドモンドは、生まれつき身体が弱く、それ以上に精神が薄弱である。それを恥じた家族から遠ざけられ、ろくな教育も受けずにこの歳まで長じてしまった。
 カーペットは愚鈍な主人に幾度も暗然たる思いを抱き、同じだけ感謝の念も抱いた。
 爵位を持たぬカーペットでも、エドモンドという青白い人形を操ることで世の中を動かせるかもしれない。野心は人生に彩りを与え、才覚を試す緊張は快感を生んだ。これほど面白いゲームが、他の主人の下で味わえるだろうか。
 その主人は、車から降りた位置のまま、オドオドと辺りを見回していた。馬に乗れず、犬を恐れるエドモンドは、狩猟地に来るのにも自動車である。格好が付かないこと甚だしいが、無理をさせて、また喘息を引き起こすよりマシだ。
 カーペットが主人を狩猟地へ連れてきたのは、このエドモンドに自信を持たせるためだった。エドモンドが冴えないのは持病のためで、それさえ克服できれば他の兄弟に劣るものでない——と。
 そんな幻想は、カーペット自身が信じていなかったけれど、必要なのは事実でない。


……と言う書き出しで、オックスフォード公(爵位継承前)とカーペットのお話を書いています。しかし意外に長くなりそうなので一旦この辺で公開。ちなみに、永遠に後編が出来ない可能性もあります。

自分の婚約披露宴で「カーペットが生きてここに居てくれたら」と嘆き悲しむオックスフォード公があまりに本気で、色々考えさせられました。
カーペットは、打算前提ですが、味噌っかすにされていた主人をよく守り立てていたのだろうと思います。だとすれば、エドモンドにとっては良い部下、親友だったのだと思います。

転じて、「テイルズオブジアビス」のガイが根から腹黒かったら、屋敷時代のルークとガイの人間関係がこうなっていた可能性もあるのか?と妄想させられました。

クリアしました。

【注意】以下、EDネタバレです。

本作の結末について、ある程度知識はあったのですが、そうであっても納得がいかないものがありました。
「時間を巻き戻し、今までのことはなかったことにする」と言うオチ。
これまで遊んだプレイヤーの約40時間はなんだったのか?
エンディングだけ見れば、死んだ舞耶や淳母、影人間になって消失したキャラクターが元に戻り、良い結末のように見えます。が、結局達哉たちの願望で現実を変えただけのように思います。
TOD2も同様に「巻き戻しエンディング」です。しかしTOD2では割合序盤から時間旅行があったり、敵側が歴史改変をするので、最終的には「正史に戻る」という後味の良い終わりでした。
しかし本作は、歴史改変や時間軸操作というネタが途中一切なく、最後にデウス・エクス・マキナとして巻き戻しが提案され、主人公たちがそれに乗ってしまう。それは安易な気がしました。
どうせ物語なのだから、滅んだ地球の上で、生き残った人々と(マイアの託宣通りなら人類は消滅はしていないので)生きるという選択肢を選ぶ道も欲しかったです。

もっとも、マイヤの託宣の最後は「そして刻は繰り返す」。つまり、このエンディングこそ託宣通り、仕組まれた道なんですよね。

前回推測していたシバルバーの正体は「思考が現実になる」で、概ね正解でした。
この辺りは、舞耶が、最終パーティ内で唯一の社会人(大人)で、他のキャラを導く者であることが良く分かりました。そうであるが故に、ラストが悲しいのですが。

フィレモンは、礼を言う筋合いはないと思ったのでお約束的に殴っておきましたが、「そういう生き物」なのだと理解したため、特に怒りはありません。
黒幕であるニャルラトホテプも同様。
その分、イデアル先生にはイライラすることになりそうなので、2周目を遊ぶことはなさそうです。

今回はエンディングに対する不満で終わってしまったので、総評は次回に回します。

エリオット・エンゲル著 藤岡啓介訳「世界でいちばん面白い英米文学講義 巨匠たちの知られざる人生」

英米文学の著名な作家12人について、生い立ちや著作が出来た背景などの裏話を語った本。講義を受けているような印象を抱きながら読んだのですが、訳者あとがきの付記に、講演のテープを起こしたものだと書かれていました。
世界でいちばん面白い!……かどうかは、判定不能ですが、各作家に対して勉強になる内容が幾つかあり、楽しく読めました。
例えば、ディケンズが「同じ本を読者に三回売った」手法は、作家と言うより商売人だな、と膝を打ちました。
過去の作家たちの有様を見て来たかのように話す語り口が軽妙ですが、近代の作家・フィッツジェラルドとヘミングウェイについては、ほとんど生涯を語っているだけで、目新しい情報がなかったのが残念でした。

最後に、少し驚いたことを。
ジェイン・オースティンの章で、彼女は英米文学史における初の大女流作家だと語られています。そもそも作家を表す author は authority(権威者)を語源としていて、つまり男性のことだったと言うのです。
英米における文学テーマは戦争、女性への愛、政治、宗教であって、女性が進出する余地がなかったのですね。
日本では、古代から紫式部や清少納言といった女性作家が活躍していたことと比較すると、面白いものだと思いました。