• 2014年11月04日登録記事

スタンダール著 大岡昇平訳「パルムの僧院」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
大貴族デル・ドンゴ家の次男ファブリスは、叔母の愛人である総理大臣モスカ伯爵の権勢により、大僧正への道を進む。しかし軽率なファブリスは殺人を犯し、政敵によって監獄に入れられた挙げ句、監獄の司令官の娘クレリアと恋に落ちてしまう。叔母の懇願で嫌々脱獄したファブリスだったが、大公の代替わりに伴いパルムへ戻り、侯爵夫人となったクレリアを手に入れるべく画策する。遂にクレリアと愛を交わすも、不義の息子をも手に入れようとしたことで二人を喪い、僧院へ隠遁する。

やっと読み終わりました。
名訳と絶賛されていますが、個人的には、かなり読み難かったです。スタンダールの文章自体が合わないのかもしれないし、個人的には、意訳して良いから分かりやすく読ませて欲しいと思うので、こういう規範的な翻訳は苦手です。
でも投げ出さずに頑張って読み進めたのだから、なにか面白いところがあったのでしょう。
上巻のお話は、ほとんど舞台設定と登場人物の紹介に費やされていて、今回書いたあらすじは、ほとんど下巻の内容です。
下巻に入ってファブリスが牢獄に入ると、恋の行方がどうなるか気になって、読む速度がスピードアップしました。

主人公であるファブリスが、困難は経ても成長しないので、この若造より、40歳を越えてなお盛んなサンセヴェリーナ公爵夫人(ジーナ)やモスカ伯爵の行動の方が面白く感じました。
特に、モスカ伯爵は可愛いですね。サンセヴェリーナ公爵夫人に本気で惚れ込んでいて、政治的には辣腕と言われているけれど、根はいいひとだと感じます。報われて良かったです。

なお、スタンダールは、かなり昔に「赤と黒」を読んでいます。今作も聖職者になる青年が主人公でしたが、意外と明るい雰囲気なのは、作中でスタンダールが何度も書いている通り、イタリア人だからでしょうか。
そういった国民差は面白いなと思いました。