- 分類読書感想
縄田一男編「吉原花魁」
吉原または花魁をテーマにしたアンソロジー。
本書のための書き下ろしはなく、色々な作家の作品から1編ずつ取り上げた形。
- 隆慶一郎「張りの吉原」
- 平岩弓枝「吉原大門の殺人」
- 宇江佐真理「紫陽花」
- 杉本章子「はやり正月の心中」
- 南原幹雄「爪の代金五十両」
- 山田風太郎「剣鬼と遊女」
- 藤沢周平「三千歳たそがれ」
- 松井今朝子「恋じまい」
シリーズから一編収録、というものが多かったですが、私は面白味が薄れると思いました。もちろん、その一編だけでも読めるようにはできていますが、登場人物の説明等が少しおざなりだったり、収録作では筋に関係しない人物が登場したりして、既に出来上がっているコミュニティに後から入って疎外感を感じたときのような、お約束が分からない居心地の悪さを感じるのです。
また、個人的には、記憶に新しい「付き馬屋おえん」(2015年4月8日記事参照)が入っていたのが純粋に悔しかったです。
読み切り短編の3作は、どれも面白かったです。
「張りの吉原」は、軽快な冒頭からは予想もしなかった壮絶な作品。短いけれど「張り(意地)」を目の当たりにしました。
「紫陽花」はしんみりしているけれど、意外なオチが揮っているのと、女同士のリアルな人間関係がさすが女性作家という印象。
「はやり正月の心中」はミステリー調。ショッキングなラストは好みでないけれど、激しく印象に残りました。