• 2016年05月16日登録記事

永井路子著「山霧 毛利元就の妻」

【あらすじ】
大内氏と尼子氏の狭間で恐々と生き抜く中国山地の小領主・毛利元就は、鬼吉川の異名を持つ吉川家から妻おかたを娶った。心配性で愚痴ばかりの元就を、「天と地がひっくりかえるわけじゃなし」が口癖のおかたが明るく支え、夫婦は戦国時代を生き抜く。

面白かったです。
血腥い戦場や、ドロドロとした人間関係が描かれているのに、カラリと笑い飛ばすおかたの性質が出ているのか、どことなくサッパリしています。

けれど、これから毛利家が成り上がり、元就の生涯が盛り上がるというところで、おかたが死んで終わってしまうのは残念至極。史実として、毛利が小国の間におかたが死んでしまうのは仕方ないのですが、非常に消化不良を感じました。この先をもっと読みたかったです。
また、上巻では夫婦の会話が生き生きと描かれ、おかたの存在が元就の決断に影響を与えているのに対し、下巻では戦の描写が増えた分、おかたの存在感が薄れてしまった気がします。

元就の息子たちはいずれも有名人ですが、娘・五もじも嫁ぎ先でしっかり働いて、それぞれが自分の働きを主張するところなどは、なかなか愉快でした。戦国時代の家族のありかた、政略結婚、人質といった要素の紐解きかたも興味深かったです。