- 分類読書感想
田中芳樹著「長江落日賦」
中国物の短編集。
- 黒竜の城(明時代)
- 天山の舞姫(盛唐時代の西域)
- 長安妖月期(初唐)
- 白日、斜めなり(三国時代)
- 長江落日賦(南北朝時代)
ややファンタジーな展開が含まれているため、好みが割れると思いますが、その点も含めて、いかにも中国小説という印象を受けました。また、田中芳樹らしい絢爛豪華さはやや薄く、中国の自然や気候を感じました。
表題作は、長さの割に面白味が伝わらなかったですが、他は短編としてきちんと構成されており、特に前半の3編は読み物として面白かったです。
でも個人的に目を引いたのは、夏侯覇を主人公にした「白日、斜めなり」。
成都に来て、悪い意味でおどろいたのは、漢王朝の正統を継ぐ、と自称するこの宮廷に、史官が置かれていないことであった。歴史記録を管理し、資料を保存するというのは、王朝の義務である、と、夏侯覇は魏にいたとき、教わっていた。漢の正統をひくと称しながら、この「文」に対する無関心はどうであろう。
と、三国志演義を別の視点から分析する面白さがありました。