• 2016年05月26日登録記事
津本陽著「独眼竜正宗」角川文庫・上下巻

感想を書くかどうか悩み、記録として記載。

歴史長編小説と銘打ってありましたが、史料をまとめた覚え書きを読まされているような本でした。
登場人物がなぜそのような行動を取ったのか、真偽がわからないことはわからないまま書かれています。小説とは、その回答を作者が創作するものでないのでしょうか。
まったく未知の世界だった奥州の動向が描かれている前半は、勉強として耐えましたが、後半は既知の史実になってくることもあって、日記等の引用で「何年何日に何をした」と列挙されている辺りは、斜め読みしてしまいました。
本書の良い点を挙げるとしたら、創作元ネタ集として活用できることでしょうか……。

山岡荘八先生の「伊達政宗」は巻数が多いので避けたのですが、横着せずそちらを読めば良かった、と思います。
で、取り敢えず短編で口直し。

司馬遼太郎著「馬上少年過ぐ」

男たちの生き様を描いた短編集。
表題作「馬上少年過ぐ」が伊達政宗の人生を振り返る短編。司馬遼太郎先生はやはり巧みだ、と思いました。語っているエピソード自体は「独眼竜政宗」と一緒なのに、こちらはちゃんと物語になっています。政宗という男の面白さも味わえました。
その他の作品も、こんな人物がいたのか!と惹き込まれました。好みとしては「慶応長崎事件」と、「貂の皮」の脇坂甚内(安治)が面白かったです。
ただ、戦国時代から明治維新まで時代がバラバラなので、少々まとまりがなく、短編集と言えど、時代は近い作品で纏めて欲しいかな、と思いました。