- 分類読書感想
武田泰淳著「十三妹」
【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
安公子と結婚した女傑・十三妹は、科挙(会試)に向けて猛勉強する夫を陰ながら助ける一方、包公と襄王の間で二分される国家の戦いにも巻き込まれている。三位(深花)で科挙に合格した夫の祝いの中、十三妹と好敵手・白玉堂は、襄王に使える忍者から挑発を受けた。白玉堂は洞庭湖を目指して去り、翌朝、十三妹も姿を消す。
画像は中公文庫版ですが、私が読んだのは「武田泰淳全集 第九巻」です。
中国三大古典「児女英雄伝」「三侠五義」「儒林外史」を切り貼りしたお話。
女武侠者・十三妹の活躍を描く武侠小説のはずですが、どちらかというと、“出来過ぎた女性と結婚して「妻に守られる夫」の立場に甘んじる男”安公子の苦悩が面白かったです。最後は、安公子が夢の中で十三妹に切られた自分の首が埋まっているのでないか、と地面を見るシーンで終わることもあり、安公子の物語だったように思いました。
肝心の十三妹は、様々に活躍するものの、何を考えて行動しているのか分かりません。特に、忍術を駆使して、安公子を三位合格させてしまうのは少々酷いと思いました。夫の努力を完全に無視しているのか、無駄だと思っているのでしょうか。それなら、なぜ安公子と結婚したのかと思いました。
中国モノなのに、突然現代的な言葉が入ってきたり、作者の発言が混在していたり、台詞の前に発言者名が書いてある箇所もあったり、書きかたはいい加減です。
しかし講談だと思えば、軽く読めて面白いと思いました。
純粋な物語としては尻切れとんぼですし、「ねずみの話」等、唐突で挿入の意味があったか分からないシーンも多く、あらすじを纏めるのには苦労しました。