• 2016年09月08日登録記事

スーザン・イーリア・マクニール著 圷香織訳「チャーチル閣下の秘書」

【あらすじ】
第二次世界大戦下、数学者のマギーは首相のタイピストに採用され、首相官邸に通うようになる。ある日、交通事故で亡くなった筈の父親が生きていることを知ったマギーは、休暇に父を捜し始め、ブレッチリー・パークに辿り着く。だが同日、マギーに変装したIRAの工作員が首相官邸に侵入していた——

当初、思わせ振りな展開がしばらく続き、1/3くらい読み進めて「父親が生きているらしい」と分かってからようやく物語が動き出した感じがしました。
それでも、父親探しだけに没頭するのでなく、仕事や友人達との付き合いがまず優先されるので、いつになったら話が進むんだ、とヤキモキしました。でも、最後まで読むと、この構成に納得できた気がします。
お話は予想外の展開に転がって行くので面白かったのですが、テロとの戦いがメインで、死傷者も結構出るだけに、痛快といってしまっていいか悩みます。
表紙からは、もっと軽い作風に見えたので、ややチグハグ感もありました。

ロンドン空爆など、第二次大戦下のイギリスの状況が描写されています。
首相官邸(ナンバーテン)の在り方は、さすがに取材に基づいているので臨場感がありますし、この時代、ナチスとIRA(アイルランド共和軍)の二勢力が繋がっていたとは知らず、勉強にもなりました。
そして国際問題を扱いながらも、配給食材の中からでも記念日にはごちそうを作ったり、おしゃれに気を配ったりする女性ならではの在り方がユニークでした。

キャラクターは多種多様ですが、まず光っているのがアメリカ育ちの主人公マギー。
自分なら秘書官が勤まると自負していて、タイピストなんてつまらない仕事を宛てがわれることに怒っている才気煥発な女性。その設定を裏付けるように、世間が男性社会であることは理解していて、状況に応じた振る舞いができるし、混乱状態に陥っても喚き立てるわけでなく、打開策を練っていくのが格好いいです。特に、秘書官陣との関係はもっとロマンス小説風に展開すると思っていたので、意外でした。
善し悪しはあれど友人は多いし、男性優位論者だと思われた上司が実はそうでもなかったり、環境は恵まれています。展開に御都合主義な部分もあります。でもマギーを応援しているとそんな細かなことは気にならず読めます。
その他、短気で偏屈だけれど信念に基づいて邁進するチャーチル首相も魅力的でした。

シリーズ化されているので、先も少し気になるかな。

ちなみに、翻訳者の姓が読めなかったのですが、奥付に「あくつ」とフリガナがついていたことをメモしておきます。