宝塚雪組赤坂ACTシアター特別公演「カラマーゾフの兄弟」11:00回。
新年初観劇で、暗い演目を選んでしまいましたが、宇治十帖(月組公演・夢の浮橋)との二択だったので、どちらにせよ一緒かな。
昨年10月の「銀ちゃんの恋」以来の宝塚観劇です。銀ちゃんとはまた違った意味で、宝塚らしからぬタイトルにも思いますが、実際はロシア文学系は宝塚では比較的ポピュラーな演目ですよね。
原作は未読ですが、名作と言われる文学にはやはりそれだけの力があるんだなと思い知らされました。頑張って読んでみようかな。個人的には新訳より江川卓訳が良いのですが、あるかしら?
まず全体の感想。
1幕は65分しか経ってなかった事にビックリするくらい濃い密度でした。その分2幕は裁判とその後だけに焦点を当てていて、良い比率だったと思います。1幕最後に大事件があって、それでどうなるの?と引きつけた状態で2幕に進むのも正解ですよね。
実は、1幕ではドミートリーの行動の駄目加減を中心にムムと唸っていたのですが、2幕の展開で目頭が熱くなりました。原作者が意図している部分は違うかもしれないけれど、結局血は水より濃く、兄弟愛は尊いなぁと感じました。
人間関係が複雑で分かりにくい&ロシア名前が難しい等の問題はありましたが、枝葉を全部そぎ落としてまとめてるんだろうなと思います。敢えて言うなら「イワンの幻覚」だけ、何の説明もなく登場していたので、どういう存在か分かりにくかったですね。最後のイワン自己崩壊に繋がるキーなので、もう少し補足が欲しかったかな。
イワンについては、帰宅してからパンフの役解説「イワン:カラマーゾフ家の次男。クールな現実家であり理想家」と言う素晴らしい矛盾に気付いて大笑いしました。でもその通りでした。
ちなみに、フィナーレはロシア民謡のユーロビートアレンジに驚かされました。娘役の衣装がヒラヒラじゃない&リフトなしと言うことで、私の好みからすると外角。フィナーレはない方が、余韻は良かったかもしれません。
でもそう言った些細な事を抜かすと、大満足です。無理矢理予定に組み込んで大正解でした。
以下、気になった役について。
今日はイワン@彩吹真央の歌声が最高に素敵でした。「マリポーサの花」観劇時には、声が疲れていて心配だったのですが、全快ですね。相変わらず細いですが……。
細いと言えば、今回はじめてちゃんと意識して見たアレクセイ@沙央くらまも、凄い体の薄さと足の細さでした。
スメルジャコフ@彩那音は、お芝居が良くなりましたね。エルマーの時は、正直物足りない!と思ってたんですけど、妖しい雰囲気が良く出てました。白いヒーロー役より、悪役の方が似合うのかも。強いて言うならイワンに否定されて自己崩壊する時はもっと派手で良いかと。なんにせよ番手に相応しい役者に育ってきてる模様で、元々雪組&月組担当だったファンとしては嬉しいところ。
カテリーナ@大月さゆは、気位の高い貴族娘と言う雰囲気は出てたと思うのですが、敢えて言うなら美貌と言う説得力がもうひとつ欲しかったかなぁ。
最後に、谷みずせチェック!
いきなり告白ですが、雪組再演エリザベートの重臣で見知って以来、谷みずせに注目中です。今まで若手に注目した事がないので、まだ謎が多いですが、あの独特の喋り方、なんとなくツボ。ダンスはちょっと不得意気味かな? 歌はソロで聞いた事がないので未知数です。
前回マリポーサは数少ない役の一つを獲得していて歓喜したのに、肝心の台詞が一つくらいしかなくて結局絶望だったと言う落ちが付きましたが、今回はじっくりピンで見られるくらい台詞があって大満足。
しかし原作を読んでいないので、グルーシェニカの後見人役と思わず、判明した瞬間は仰け反りました。また実年齢に合わない老け役ですよ。このまま老け専になってしまうの?
もう一役の裁判官では、恐らくサムソーノフと区別する為でしょうが、あまり個性を出さず、淡々とした進行でした。が、最後に演じたモブ(流刑者)の一人が面白かったですね。見付けられないかもと思いながら取り敢えずオペラグラスで中心から見て行ったら、ミーチャの後ろで、一人佇んでいる流刑者、これが谷だったと思います。他の流刑者には家族らしき面会人がいるのに、一人で詰まらなそうにしてるなんて寂しい奴なんだろう、どういう経緯でシベリアに行くのだろう、と想像と言うより妄想の翼が広がりました。
そうそう、私が好きな「自分の心の中に良心と言う神様がいる」と言う思想は、なにが原典か分かっていなかったのですが、今日のアレクセイの「良心こそ心の中にある神の姿です」と言う台詞で、ドストエフスキーが原典なのかもと気付きました。