オークシイ著、中田耕治訳「紅はこべ」
【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
フランス革命後、ギロチン行の貴族達を謎のイギリス人「紅はこべ」が救出していた。イギリスの大貴族に嫁いだマルグリートは、敬愛する兄の命と引き換えに紅はこべの正体を探るよう脅され、夜会で知った、紅はこべが明日亡命者たちと落ち合うと言う情報を革命政府全権大使ショーヴランに教えてしまう。だが翌日、愚鈍と疎んでいていた夫パーシーが紅はこべであったことを知ったマルグリートは、夫への愛に目覚め、自ら彼を追って危機を知らせようとする。三者の追跡と駆け引きの末、紅はこべによる亡命者と兄の救出が果たされる。そして互いへの疑心が晴れた二人は、愛を確かめ合うのだった。
先日感想を書いた舞台「スカーレット・ピンパーネル」の原作「紅はこべ」。
何種類か出版されているようですが、私が読んだのは河出文庫版。
頁を開いた途端、最近の本と異なる細く小さな活字体に、なんだか昔の文学集を読んでるようなワクワクした気持ちになりました。
訳は、ちょっと接続詞が変だなと思う所もありましたが、そんなに引っ掛かることなく読めました。
期待通り面白かったですが、原作はマルグリットの視点中心に進むため、パーシーを主人公にした冒険活劇である舞台版に比べると、心理劇の面の要素が強いでしょうか。
二人が結婚済の時点で物語が開始していることや、皇太子ルイ・シャルルの救出やパリでの痛快な活躍がまったくないことから、舞台版の脚本を書いたナン・ナイトン氏は凄い膨らませ方をしていたのだな、と大変驚きました。
もし先に原作を読んでいたら、舞台版に違和感を感じたのでしょうか? しかし根底が同じ作品であることは間違いなく、私は違和感なく両作とも楽しめました。
読んでいて、ところどころ「怪盗ゾロ」を思い出しましたが、あれも謎のヒーローと、その正体を知りたいヒロインのお話ですね。
原作ではアルマンがマルグリットの兄(舞台では弟)であることは予め知っていたのですが、アルマンが好男子な上、マルグリットが異常に兄想いなので、自分がパーシーだったら少し妬けるような気がしました。
弟だと、あの愛情過多も多少許せるし、パーシーに救出を懇願しても良い気がするのですが……。
これは勝手な想像ですが、普通に格好良くてビックリした明日海りおのアルマンは、もしかすると原作を参考にしたのかな?と思いました。
ショーヴランが有能だったので、敵として怖さが増していました。でも、どの要素で紅はこべの正体に気付いたのかは不思議。食堂で寝てるパーシーを見付けた段階では、彼の事は疑ってませんでしたよね。晩餐会から帰宅するマルグリットと話すシーンの時にはまだで、彼が出発してから気付いた?
一方の紅はこべの扮装は、途中で勘付いたため、そんなにあっと驚く面はありませんでした。どちらかと言うと、鞭打ちされた上、ショーヴランへの直接の仕返しなしのままと言う展開に驚きました。
続きのシリーズ作品があるようなので、そちらで報復したのかな。