水鏡希人著「君のための物語」
【あらすじ】
身投げした女性を助けようとして川に落ちた作家志望の「私」は、その女性セリアと、奇妙な男レーイに助けられる——
近代ヨーロッパを彷彿とさせる世界で綴られる、ファンタジックで心温まる物語。
連作短編構成で、セリアを媒介とした、「私」とレーイの物語になっています。
タイトルの「君」が誰なのか、最後に分かって一本取られました。
静かな雰囲気の作品ですが、くすっと笑える要素もあります。主人公が驚いたときに発するお約束の「ぬはぁ!」に、なぜか神坂一やあかほりさとるの要素を感じました。
満足度は高かったけれど、後編で明かされるレーイの正体は、もう少し理屈を飛び越えた展開が欲しかった気がします。あるいは、謎のままでも良かったのかなぁ。妙にスケールダウンしてしまった気がしました。