- 分類読書感想
藤水名子著「項羽を殺した男」
5つの短編で、項羽のそばにいた人物から項羽という人物をあぶり出す作品でした。
短編の構成は下記の通り。
- 呂馬童が垓下で項羽を追い詰める表題作「項羽を殺した男」。
- 春花が項羽との出会いを回想し自死するまでの「虞花落英」。
- 范増を主とする複数人の視点で鴻門の会を描く「范増と樊噲」。
- 英布が劉邦に反乱した顛末を描く「九江王の謀反」。
- 項梁が項羽を育て、殷通をだまし討ちして起つ「鬼神誕生」。
「九江王の謀反」のみ項羽の死後の話なので、少し時代感覚が狂いました。
個人的な好みで判断すると、この作品群なら、冒頭を「九江王の謀反」にして、年代を遡っていく構成の方が良かったかなと思います。
逸話は史記をベースにしているので、さほど目新しい内容ではないけれど、没後を描いた「九江王の謀反」と、女性視点で項羽を見た「虞花落英」は引き込まれました。
最終的な勝者である劉邦について、大漢帝国の有様を見るにどうしようもない人物であったのだろうと私は思っていますが、本書を読んで、項羽もベクトルが違うダメ男だなと思いました。