• 2014年10月05日登録記事

原田ひ香著「人生オークション」

表題作「人生オークション」と「あめよび」の2つの中編。
2作あると思っていなかったので驚きましたが、意外にも「あめよび」が良かったです。
読み終わった直後は、最後に輝男が明かしたという諱(いみな)が分からなかったのですが、文庫版では斎藤美奈子(文芸評論家)による解説があるため、なるほどそういう意味だったのかと納得しました。
それが分かってみると、輝男の心情も理解できるし、それでも自分は女性として美子に共感し、彼女の決断を当然だと思うのでした。男と女、そして2人の立場の違いを考えさせられ、それでいてサラリと描いているところが良いと思います。

(2015/6/5 追記)
「輝男の諱はなんだったのか」と質問を頂きました。
私は、輝男は本当に諱の風習がある地域の生まれなのではなく、別の名前を持っていることを「諱」として説明していたのだと思います。つまり平山輝男という名前は、日本人としての通名だということです。
これはあくまで1読者の解釈ですので、作者の意図とはズレている可能性を了承の上、考察の一助としてください。