• 2014年10月10日登録記事

伊坂幸太郎著「SOSの猿」
http://www.chuko.co.jp/special/sos_bunko/

【あらすじ】
副業で悪魔祓いをしている遠藤二郎は、知人から引き蘢りの息子を診て欲しいと頼まれ、青年と会う。青年は自分を「西遊記」に登場する孫悟空だと言い、その証明として未来を語り出す。

「私の話」の話の冒頭を読んで、現代日本人が半信半疑で悪魔祓いをやっているという設定が面白いと思って読み始めたのですが、なんだこれは、と疑問符を付けながらの読書になりました。
現代日本を舞台にしているのに、なぜか「西遊記」の妖怪が登場し、怪異が発生するエピソードが入ってくるのです。
その後、合間に挿入される「猿の話」の仕掛けが分かり、遠藤二郎と五十嵐真が出逢って話が一本化された時はなるほどと思ったのですが、結局その後も、現実と幻想が入り交じった展開が起こるので、なにが事実か分からず、非常に消耗しました。
妖怪がいる世界という設定で描かれているなら、私はそれでも構わないのですが、そういう設定自体が曖昧で、結局どういう話だったのか、なんとも表現できません。読み手に考えさせるにしても、果たして「答え」が設定されているのか疑問です。
ただ、「西遊記」を読み直したくなったので、「西遊記」紹介本としては面白かったです。

主人公を筆頭とする登場人物全員が、私には理解できませんでした。
彼らはみな本当に心が優しいのかもしれないけれど、半年以上も同じことを悩み続けたりする繊細さも、「もしかしたら死体があるかもしれない」という眉唾情報だけで、他人の家に勝手に上がり込む神経も、少し変だと思うのでした。