• 2016年03月11日登録記事

長嶋有著「ぼくは落ち着きがない」

【あらすじ】
高校の図書部員である望美が、図書室内の部室で過ごした朝、昼、放課後の時間の光景。

クラスカーストの下層にいる生徒たちが集まって過ごす、少し痛みのある日々。
それはリアルだけれど、それゆえなにも起きない「ぼくは落ち着きがない」というお話でした。
望美だけ遭遇できない謎の転校生であったり、不登校になる友人であったり、文芸部との確執、部室の取り上げ等、なにか起きそうな出来事はあるのに、なにも展開しないという不思議な小説でした。

クラスから少しハミ出ているオタク層に感傷を感じたり、人間関係を演じている自分を客観視した視点に頷いたりはしましたが、あまりに何も起きないので、中盤以降は、なんとなくダラダラと読む形になりました。
両開きの扉を開けて入る図書室を「西部劇だ」と想像する冒頭には、グッと掴まれたのですが……。

結局、金子先生が書いた小説が本作という構造なのか否かも分かりませんでしたが、どちらにせよ、女性である望美を主人公にした小説が「ぼくは落ち着きがない」というタイトルであることは疑問です。