• 2016年03月14日登録記事

アンディ・ウィアー著 小野田和子訳「火星の人」

【あらすじ】
火星探索チームの離陸直前、不慮の事故によりワトニーは砂嵐の中へ飛ばされ、火星1人に取り残された。4年後の火星探索船到着まで生き残るため、植物学者にしてメカニカル・エンジニアのワトニーは、限られた資材と知識を駆使して活動を始める。

映画「オデッセイ」の原作。映画予告を見て面白そうだと思った作品。
文庫の分厚さに一瞬怯みましたが、読み出したら面白くてあっという間でした。
なんといっても、ユーモアに溢れた軽い語り口が特徴。

ここ二、三日、ぼくはご機嫌で水をつくっていた。すいすいと進んでいた。(わかるかな? “すいすい”)

というソル37のログには、思わず吹き出すと同時に、原書はなんて書いてあるのだろうと思いました。
宇宙探索の専門用語も多数出てきますが、きちんと説明されているし、なんせ資材の種類は限られているので、理解できないことはありませんでした。

勿論、描かれる火星の日々が面白いのは、大問題が勃発しても、他人事のように俯瞰して分析し、冷静に対処していこうとするワトニーの精神と、彼のユーモア(たまに低俗)と反骨気質がいい味を出しているからです。
かなりお気楽に語る面もあり、火星での日々が一見楽しそうにすら見えますが、これはあくまで「ログ」という体裁なので、将来、仲間のクルー達が目にしても心を痛めないよう、ある程度道化を装っているのだと思いました。
ワトニーの生存に、地上が気付いてからがまた面白いところ。
地上側(NASA)のヴェンカトも個人的に好き。その他も、無意味な横槍をするような人間がおらず、真摯にプロジェクトに取り組んで行くので、物語の進行に集中できるのが良かったです。