- 分類読書感想
白川紺子著「下鴨アンティーク アリスと紫式部」
【あらすじ】
兄と下宿人・慧と共に暮らす旧華族の高校生・鹿乃は、虫干しのため、開けてはいけないと言われていた蔵から着物を取り出した。ところが、蔵の着物には何かが憑いていた。鹿乃は、着物に描かれた源氏車が壊れたり、長襦袢が泣き出したりと、次々起こる怪異に対処していくことになる。
アンティーク着物をめぐるミステリー、と裏表紙にあったのですが、完全にファンタジーでした。普通の日常ミステリだと思っていたので、謎=怪異だったり、解決方法が霊的なものだったりということに面食らいました。
そんなわけで、最初の一話は戸惑ううちに読み終えてしまったのですが、古き良き少女小説と思って読めば、面白かったです。
着物の話や合わせかた、古典や能等の話が多く盛り込まれているので、教養レベルは結構高め。怪異も含めて、我々が夢想する“憧れの古都”の雰囲気が楽しめました。探偵役の鹿乃は、決して頭のいい少女ではないものの、きちんと躾けられた少女として振る舞うので、旧華族という設定も嫌味がないし、安心して読めます。
本作は集英社オレンジ文庫というレーベルで出版されていますが、ノリはコバルトと大差ないように思います。特に、恋人役が年上で教職という設定から、日向章一郎の「星座」シリーズを思い出しました。