• 2015年06月登録記事

飛鳥井千砂著「サムシングブルー」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
27歳の事務員梨香は、イラストレーターの恋人と別れ泣き伏した翌朝、高校時代の彼氏と親友の結婚招待状を受け取り動揺する。同級生たちと一緒に結婚祝いを贈ることになるも、ことあるごとに心から祝えない自分に気付かされる。だがその苦しみの末、心の内で切り捨て封じていた青春時代を思い出した梨香は、友人たちとの繋がりに幸せを感じる。

いい作品でした。
読み始めは、率直に言えば「失恋ごとき」に主人公が囚われ過ぎだという気もしたのですが、実際、他人から見て大した事件でなくても、本人にとってはかなりの衝撃ですよね。
そんな、とても身近でリアルな小さな世界が丁寧に描かれていて、それでも最後はハッピーエンドに至って人生を肯定してくれる優しいお話に、好感を覚えました。

登場人物は、どの人物も、良い面があり、嫌な面があり、でもこんな仲間と過ごした日々は楽しかっただろうなと思います。

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白金の焼き菓子専門店「COMME PARIS」
http://comme-paris.com

4種類の焼き菓子を頂いてみました。
サイズは3〜5cm程度。

  • プティマドレーヌ
  • プティカヌレ
  • ヴィジタンディヌ(丸形フィナンシェ)プレーン/ココア

しっかり焼けているけれど、中はふわりと軽くできています。個人が小さいサイズで焼き菓子を作ると、もう少し全体に火が通ると思うので、こういところがプロの技術なのでしょう。
甘さは、やや強め。最近は砂糖控えめの上品な味が主流ですが、これはこれで懐かしい味で私は好きですね。
小麦粉と砂糖と卵の、まさに手作りの味。
ただ、カヌレは少し酒が利いているのか、独特の風味があって私は苦手でした。

日持ちは5日程度。
1口サイズで食べやすいので、油断しているとポイポイと消費してしまいます。珈琲や紅茶にプティガトーとして添えて出したら、お洒落ですね。

TVアニメ「アルスラーン戦記」10話「カシャーン城塞の主」
http://www.arslan.jp

まず、今日の作画は、安定して綺麗で安心しました。
絵が綺麗な分、ナルサスの無表情・無言の佇まいが怖かったですね。
お話としても、アルスラーンが奴隷解放を掲げることを決めたけれど、それが奴隷にとって必ずしも善ではないというところまで1話で盛り込んであって、良い流れだったと思います。台詞や説明は相当削られているけれど、大筋の理解を妨げるほどではないと信じておきます。まぁ、Cパートを設けるより、その分の尺を本編に入れて欲しかったとは思います。
個人的には、先週盛り込んだ漫画オリジナル要素「エトワールから受け取った聖書」を放置しているので、それくらいは入れて欲しいです。

ホディールの立場に立ってみれば、奴隷が多数いるエクバターナにいたはずの王太子が、奴隷解放なんて言い出していて、その側には奴隷解放派のナルサス卿がいるとなれば、「殿下はナルサスの傀儡になっている」と思い、手を打とうとするのは当然の流れだと思います。
実際、ナルサスがいなかったら殿下は奴隷解放を掲げていないし、ホディールの考え自体はハズレでもない。
ただ、殿下を懐柔するだけの話術と、交渉決裂した時のリカバリー能力がなかったのが、ホディールの不幸でしたね。

バルコニー伝いに部屋を移る殿下の行動力には、ちょっと驚かされました。
ギーヴが宴で摘んでいる料理がそら豆に見えたので少し確認してみたら、実際に、中東ではそら豆をよく食べるのですね。そら豆が食べたくなってきました。

「正義とは太陽ではなく星のようなものかもしれません。星は天空に限りなくありますし、互いに光を打ち消し合います」は、あらゆる状況に転用できる名言ですね。
“自分の正義”が唯一絶対でないことを、すべての人が心に留めれば良いのにと思います。
ちなみに、そんな感じで殿下の教育係を務めるナルサスですが、アニメEDのカットを見るたびに、ソードワールドの「“指し手”ルキアル」のイメージもこんな感じだろうか、と思います。同じ「天才軍師」でも、ナルサスは主人公側の軍師なお陰で、有能でいられますね。

エンドカードは大今良時先生。繊細なタッチで描かれたアズライールが格好良かったです。

朝からビックリさせられました。
「うたわれるもの2 偽りの仮面」TVアニメ(2015年秋番組)放送発表
http://utawarerumono.jp

ゲーム発売日(9月24日)に対して、アニメ化の発表と放映時期が早い。
素人考えだと、ゲームソフトの売上に影響しそうだと思うのですが、制作会社は当然そのくらい考慮しているでしょうし、となると「アニメを見たらゲームを買って先を知りたくなる」という自信があるのかな。SLGはプレイ時間のかかるゲームだと言っても、集中的にプレイすれば25話(半年)の間にはクリアできますものね。
アニメは2クールだし、「3」も作ると言っているし、強気だなぁと思います。
(私は、今のところアニメを見るかどうかも分かりませんが……)

現段階でアニメーションPVを出せる程度に制作が進んでいるということは、クオリティは保証されていそうで、その点安心ですね。

ハリイ・ケメルマン著 永井淳・深町眞理子訳「九マイルは遠すぎる」

いわゆる「安楽椅子探偵」物の短編、ニッキイ・ウェルト・シリーズの8編。
基本的に、聞いた話から推論を語る展開がほとんどなので、地味な話が多いですが、結果として犯人の悪意等に直接触れることが少なく、犯罪が対象のミステリにしては軽くて読みやすく感じました。

著名な表題作「九マイルは遠すぎる」は、やはりスマートな印象。
「推論は理に適っていても正しくない」ことを証明しようとした結果、推論で犯罪を暴いてしまったというオチも揮っています。
ただ、「わたし」が言った「九マイルは遠すぎる」の台詞が、実際は他人の台詞であることがキチンと明言されていないのが少し気になりますが、これは翻訳物だから伝わって来ないだけでしょうか。

10時の学者」のみ、犯人に「真相を知っている」と仄めかす伝言をして故意に自殺させるオチに、後味が悪いと思いました。

エンド・プレイ」は、無関係かと思われた被疑者も推論の中に組み込まれていて無駄のない構成でした。ただ、この作品は読者に与えられる情報が少なくて、推理は困難なのが残念なところですね。

7編までは、ニッキイの推論に驚くばかりでしたが、最後の作品「梯子の上の男」は、私でもちゃんと解けました!
他の作品に比べると、語り手が現場にいる頻度が高く、状況証拠=ヒントが多いためだと思いますが、少しは推理能力が上がったかな、と嬉しくなります。

それにしても、この手のミステリを読むと毎回感じることですが、みんな、記憶力が良いのはもちろん、正確に状況を供述する能力に長けていて驚きます。