• 2015年06月登録記事

TVアニメ「血界戦線」5話〜9話
http://kekkaisensen.com

感想が遅れましたが、「血界戦線」もちゃんと見ています。
相変わらず作中は言葉不足なので、なにが起こっているのか、雰囲気しか分からない時もあります。それでも次回をちゃんと見ようと思うくらい、全体的にセンスが良く、テンポも良く、映像も良く、と楽しんでいます。
実のところ、視聴している3番組中、一番面白いかもしれません。
原作付きではあっても、アニメオリジナルキャラクターとストーリーが入って、先の展開がわからないという緊張感もありますね。
問題のオリジナルキャラクターも、今のところ巧く使われていると思います。でも、その辺は最後まで観てから評価したいと思います。
こんなに良くできた作品で楽しんでいるのに、オリジナル部分がクローズアップされてくると不安が沸くのが、GONZOクオリティですね(笑)。←と思っていたらBONESだった!

内藤先生が描かれるアクションは、ギミックや一枚の絵としては格好良いけれど、なにをどう動いているのかよく分からないと常々思っているので、アニメだとストレスなく見られます。
また、エロとグロは、ケチャップと味噌(5話)やら、サーモグラフィー(8話)やら、巧い婉曲表現で規制を回避しているので感心しました。

みをつくし料理帖シリーズ最終巻「天の梯」

シリーズ完結巻。
終わってみると、ラストは少し駆け足気味に感じたけれど、小松原様との破局や又次の死も、すべて予定調和だったと感じる、無駄のない作品でした。
もちろん、エンターテイメントであるから、多少ご都合的にすべてが巧く纏まるようになっています。摂津屋を筆頭にあさひ大夫の旦那衆が、こんな鯔背な男たちでなかったら身請け話は進まないですよね。
とはいえ、読者は正に「雲外蒼天」の物語を期待して読んでいるわけですから、苦労の末の大団円は待ち望んでいたもの。正しい終わりかただったと思います。
采女宗馬が逃げて捕まらなかった点は悔しいですが、これは番外編で回収するのかな、と勘繰っています。

巻末に付録として、文政11年の料理番付が付いていました。作中「元号が文化から文政へと移った。」と記されているので、物語の終わりから10年後ということになるので、東西の大関に上り詰めるまでの精進の日々を色々想像できる、なかなか粋な仕掛け。
ただ、一柳が天満一兆庵に名前を変えてしまったことは、個人的に引っ掛かりました。
柳吾自身が名に拘っておらず、ご寮さんがいい女将で、佐兵衛が後継者として皆から認められているとしても、一柳でずっとやってきた奉公人からしたら「後妻と連れ子が乗っ取った」という気になりませんかね?
普通なら「天満一兆庵が再興した」と感動すべきポイントに、ケチを付けるのも気が引けるのですが……

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鎌倉・長谷にある鎌倉野菜を使ったイタリアン「0467 Hase kamicho」でランチをいただきました。
http://kamakura0467.com/0467hase-kamicho/

まず、古民家を改装したという建物は、全体的に和洋が合体した雰囲気。収容人数は、恐らく20名強というところでしょう。
お洒落だけれどこじんまりしていて、全体的に落ち着いた印象を受けました。

ランチプレートは、一皿に前菜から主菜まで盛り付けた形で提供。簡単なものですが、料理の説明もして頂けます。
色とりどりの見た目が、まず「美味しそう」という期待感を煽ります。
このお店のウリは、鎌倉野菜と魚とのこと。珍しい野菜や味の濃い魚は実に美味しかったです。でも、メインディッシュはご覧の通りお肉でした(笑)。
スープはコーンスープでしたが、ただのコーンではなく、複雑な味わいがしました。恐らく、後味からするとローズマリーが入っていたのではないかと思います。好みは分かれそうだけれど、面白いアイデアだと思いました。
イタリアンなのに、パンの代わりにご飯を選択することもできるのは、日本人向けで良いですね。

デザートは別料金オプション。プリンを頂いてみましたが、上はクリーミー、下はさらっとして美味で、とても私好みでした。
食感として近いものは、パステルの「なめらかプリン」でしょうか。
カラメルは量が多い割に甘過ぎも苦くもなく、程よい具合でした。

有吉佐和子著「新装版 和宮様御留」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
少女フキは、降嫁を命じられた皇妹和宮の身代わりに仕立て上げられ、なにも知らぬまま輿に載って江戸へ向かう。しかし偽物と疑う命婦等と接する緊張から心身を壊し、遂に発狂してしまう。公武合体を推進する岩倉具視は、新しい身代わりとフキを入れ替え、気の狂った和宮としてフキは翌日横死する。

和宮親子内親王が家茂に降嫁したことは、史実としてもちろん知っていましたが、和宮が有栖川宮との婚儀前だったとか、東下を拒否していたといった詳細は知らなかったので「こんなことがあったのか」と新鮮に、興味深く読みました。
もちろん、小説を史実と混同してはいけないし、実際、幕末の和宮は直筆の手紙を御所に送った筈だから替え玉なわけないと思うけれど、もしかしたら「和宮様」は1人じゃなかったのかも、という気になってきます。

フキが和宮と入れ替わるとことは、裏表紙の説明で解説されてしまっているのですが、実際に入れ替わるのは全体のページが4割くらい消化されてから。そこから実際に江戸へ出立するまでに更に3割使い、こんなにも知恵のないままフキが和宮として大奥に行ってどうなるのかと思いきや、なんと最後に大どんでん返しで、もう一度入れ替わるという下りには驚愕しました。
前半が非常に濃密な分、後半は少し呆気ないけれど、その呆気なさが、御国の大事にあっては一個人など埃のように軽くなることを示しているのかも知れません。
そもそも驚くべきことに、誰もフキに対して、身代わりをさせることを説明しないのですよね。観行院以下誰もが、婢なんて言われた通り、或いは言わなくても自分たちが思った通り働くべき存在だと認識していたんでしょうね。

読み終わって冷静になってみると、連載歴史小説らしい悪い点もあります。
登場人物がいきなり増えて、出番が終わると以後一切語られなかったり、視点を変えて色々語る割に、気になる背景が語られないまま終わっています。特に、宇多絵がなにをどう言い含められてここに来たのかと、土井重五郎と岩倉具視の繋がりを語らないのは、物足りないです。
しかし、圧倒の筆力で描かれる、ミステリ調に謎めいた雰囲気、御所言葉で会話する独特の雰囲気、公家の生活という、現代人からすると異次元の暮らしといったものは、歴史小説好きなら一読の価値ありと思います。