• 2015年11月25日登録記事

アマン・マアルーフ著 牟田口義郎訳「サマルカンド年代記 ー『ルバイヤート』秘本を求めてー」

11世紀ペルシャの詩人オマル・ハイヤームの半生と、彼の手稿本が歴史の中に消え行った経緯を語る前半(第一部・第二部)と、その手稿本を目的に中近東へ渡ったアメリカ人ルサージが、イラン立憲革命に巻き込まれ、そして手稿本が本当に失われるまでを描いた後半(第三部・第四部)の二部構成。
正直、中近東の歴史をまったく知らないので、どこまで真実でどこからフィクションなのか混然としているくらい、色々信じてしまいそうな濃さでした。
知識人としては一流でも、物事は成さずに終わるオマル・ハイヤームに対し、暗殺教団の開祖ハサン・サッバーフと、セルジューク朝全盛期の宰相ニザーム=ル=ムルクは、善し悪しはともかく、こういう人物が実在するのかと感心しました。まさに、事実は小説よりも奇なり。

全体的に淡々としていて、訳も少々読み難かったのに最後までページを捲り続けたくなる、不思議な魅力があります。
ただ、手稿本がルサージの手に渡る紆余曲折が、シーリーン王女の好意でしかなく、それまでの盛り上げに対して少し弱いようにも思ったり、結局ハイヤームもルサージもすべてを失う終わりに、虚しいところもありました。

ちなみに、個人的には、四行詩というものの魅力が分かると良いなと思って読み始めたのですが、その辺は全然感じられませんでした。
「ルバイヤート」が「ルバーイ」の複数形ということが勉強になったくらいかな。