• 2016年02月07日登録記事

短編集2作。

小泉吉宏著「四月天才」

何も知らずに読み始めたら、ショートショート集だったので驚きました。
何度も述べている通り、私は星新一先生のショートショートは非常に好きですが、この作品はユーモアよりシュールさが強く、オチがない作品もあって合いませんでした。
鏡の中の自分と入れ替わって消えてしまう「合わせ鏡」等、やや怪奇的なものは面白かったです。

光文社文庫編集部編「江戸猫ばなし」

この手のアンソロジーは、他の作品からテーマに沿った掌編を集めてくるものが多い中、全編書き下ろしという嬉しい企画。

  • 赤川次郎「主」
    赤川次郎作品は初めて読んだかも知れません。
    化け物が出てきたり、事件の解決が呆気なかったり、ミステリーとしては少々疑問でしたが、猫姫様の存在が光るキャラクター小説。
  • 稲葉稔「仕立屋の猫」
    一番時代劇らしい人情もの。特別尖ったところがなく、素直なお話。
  • 小松エメル「与一と望月」
    本物の猫を飼う代わりに「猫絵」を飾って鼠対策にする、という当時の迷信を初めて初めて知りました。
  • 西條奈加「猫の傀儡」
    7編中、一番好き。猫が猫たちの為に人間を使って事件を解決するという設定が面白いし、キャラクターも味があって可愛い。シリーズ化していてもおかしくないと思います。
  • 佐々木裕一「ほおずき」
    大きな物事は起きないのですが、個人的には説明不足で納得できなかったお話。猫が縁結びをするという点で「仕立屋の猫」と被っていたのも残念。
  • 高橋由太「九回死んだ猫」
    「100万回生きたねこ」のオマージュですが、暗いので読了感が今ひとつ。私としては、ベタでも、猫と再会して終わった方が昇華できた気がします。
  • 中島要「鈴の音」
    叔父が「猫を愛した」と文字通り思い込んで、猫を猫又だと追い込む勘違い部分が面白かったり、御家と人間のあれこれが切なかったり、読み進めると雰囲気が変わっていく作品でした。

面白い作品も複数あり、一編ずつが適度な長さで、満足度の高いアンソロジーでした。