- 分類読書感想
青柳碧人著「ブタカン! 池谷美咲の演劇部日誌」
【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
演劇部に入部した2年生の美咲は、入院した親友の代わりに舞台監督を担当することになる。脚本担当者の逃亡、練習に来ない兼部キャスト、講堂の焼失によるステージ設営など、様々な困難を乗り越え文化祭の劇を成功させる。
最初はタイトルに驚かされますが、「ブタカン」は、舞台監督の略。
みんなで1つの舞台を作り上げる、青春の熱気が熱く、奇人揃いの劇部員も含めて楽しい作品。頻繁に鼻血を出すみど先輩は、最初はウザイ個性のつけかただと思ったのに、段々お約束の芸みたいな感じに昇華されるのが面白かったです。
ミステリと銘打たれていたけれど、そういう要素は0に近いですね。謎解き要素は、入院中のナナコが、消えた脚本の在処を言い当てた箇所くらいです。
作中、最初に早乙女先輩作の脚本として登場する「走るな、メロス」が、あらすじだけ読んでも、実際に面白そうで惹き付けられるあらすじで、ここでギュッと掴まれた気がします。引用しようと思ったらP.39〜41と長かったので断念。
文化祭用の新作「白柚子姫と六人の忍者」は、山場の多さに3時間くらいの大作芝居なのか?と思うし、ギョウザをネタにしたセリフはイマイチだと思いましたけれど、よくこんな口上を思い付くなと感心はしました。ラストが物悲しいというのも、文化祭用のオリジナル脚本にしては、かなり高度で意外に思います。
細かいことを言えば、部活とはいえ、ここまでちゃんとスタッフ部門がある演劇部で、中途参加の2年生(経験なし)に、いきなり舞台監督を任せる導入設定は疑問です。
もちろん、美咲が素人ブタカンだから、読者と同じ目線で話が展開できるという仕掛けはわかりますし、機能もしていたけれど、普通なら部長のみど先輩辺りが代打するのが妥当では。
また、親友ナナコの病気に関する話がまったく好転しないまま話が終わってしまうのも、消化不良でした。まだ連載が続くための仕掛けなのでしょうね。
ということで、案の定続編も出ていました。