- 分類読書感想
有川浩著「フリーター、家を買う。」
【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
採用された会社を3か月で辞めて以来、親の臑を齧って2年過ごした誠治だったが、母親が町内での苛めを苦に精神病発症してしまう。一念発起して夜間の工事バイトと同時に就職活動も進める内に、心を入れ替えた勤務姿勢が評価されバイト先の建築会社に登用される。仕事に本気で取り組むうちにやりがいも見出し、纏まった貯金ができた誠治は、母のため二世代ローンで引っ越しを行う。
「家を買う」というタイトルに対して、私はなぜか新築住宅を現金即決!と思い込んでいたのですが、主人公が出すのは頭金の一部だけだったり、父親のコネで見付けた中古住宅だったりと、随分現実的な話でした。少し拍子抜けしたのですが、この辺は無理のない範疇で良かったのだと思います。というか、私が夢を大きく描き過ぎですね。
有川浩作品なので、全体的にはスムーズに楽しく軽く読み進めました。
読み終わって振り返ると、「トントン拍子」にうまく行き過ぎかな、とも思いますが、物語なのでその辺は許容範囲でしょう。
誠治の再就職活動の下りなどは、就職活動前の学生には随分勉強になると思います。
また、母親の病状に関する箇所が色々と身に染みました。
不満としては、主人公である誠治が、序盤は本当にダメフリーターなのに、心を入れ替えた中盤以降は急に「できる男」になってしまい、違和感を感じました。そもそも、瞬間的な気分でバイトを辞めるような男が、母のために一念発起するものか、と疑ってしまうのは偏見思考でしょうか。
そして、心を入れ替えた誠治は確かに性格も良くて格好良いのですが、本編の後に挿入される豊川視点の章「傍観する元フリーター」で、真奈美共々持ち上げ過ぎたように思います。少々、鼻白みました。
それにしても、町内会は怖いですね!(笑)
笑ってはみましたが、私は町内会がある地域で暮らしたことがないので、半分本気で恐ろしいなと思いました。