• 2010年10月19日登録記事

公演から約1年。今この時期に改めて観直す「カサブランカ」DVD感想を始めたいと思います。

【序】
1940年、アメリカ人の男リックがフランス領カサブランカに流れ着き、カフェの経営を始める。

得意のトレンチコートを羽織った背中でのセリ上がりは、最高のお披露目だったと思います。在団歴が生む男役芸と言うものを、確かに証明しています。この時リックはかなり痩せていたと思うのですが、ダブルのスーツの御陰か、身体に厚みがあるように見える気がします。
ふ、と吐き出す紫煙にもくらくらします。実生活では麻生は煙草が嫌いなのですが、リックが煙草を吸う仕草は格好良いので許すと言う、所詮現金なファンです。
どこか空虚な歌声に併せて、映像が動き群衆が登場してカサブランカの町が出来上がる様は、モロッコの乾いた風が吹いているような空気を感じます。
「世界初ミュージカル化」「スポンサー付きの1本物大作」と鳴り物入りだった反面、静かに開始するプロローグが、独自の作品色で面白いです。

【1幕第1場 裁判所前広場】
1941年12月1日、カサブランカはナチスから逃れようとリスボン行きのビザを求める亡命者で溢れている。この日は特に、ドイツ外交官が殺され特別通行証を盗まれた事件で、街中がごった返していた。

亡命者によるコーラスが2曲続く、聞き応えのあるシーン。特に1曲目の「ヴィザを私に」の緊迫感が大好きです。
多数登場している下級生探しをするのも楽しいですね。蒼羽りく&天玲美音の映り込み率が高い気がするけれど、単に私が確実に見分けられるキャストだからそう感じるのでしょうか。
今頃気付いたこととして面白いのは、亡命者の衣装の色です。グレーとか褪せた色なのですが、全体を観ると青系(一部緑)なんですね。赤色は皆無。この辺は、何かを暗示しているのかな。この舞台全体も、赤い色を避けた色使いですよね。モノクロ映画のイメージを壊さない為でしょうか。

【1幕第2場 空港】
ドイツ軍シュトラッサー少佐がカサブランカに着任する。フランス警視総監のルノーは、外交官殺害の犯人は今夜リックのカフェに現れると報告する。

シュトラッサー少佐は、登場シーンのスマートさに、ただの悪役でない矜持を感じます。同じ悠未ひろが演じた氷(シャングリラ)も悪ではない敵役でしたが、少佐くらい抑えた演技の方が個人的に好きです。
久し振りに観ると、ルノー大尉の肉布団の厚さに改めて感心します。手足が長いため、ちょっと体全体のバランスが劇画的なのはご愛嬌。本人は動き難くないのかな?
軽々と演じているので忘れがちですが、幕前に一人で、背後の盆は回っているので立ち位置に注意が必要、且つ小物の扱いもある、難しいシーンですよね。しかしこの余裕があるように見える所が、実に大尉らしくて良いと思います。