• 2012年03月01日登録記事

2009年にエイプリルフール限定公開したBASTARD!!サイトより、もう時効と言うことで収録。
PS版ゲーム「虚ろなる神々の器」1章より。


 周囲は次第に道幅を狭め、指示通り封印された海岸線へ続く渓谷の路へ向かっていることは間違いないようだった。
 それを確認したヨルグは、前を進む若い男の背に問いかける。
「あの男の話を飲むのか?」
 問い掛けに、男――マカパインが振り向いた。沈黙を続けていたヨルグに、まさか己の意志があるとは想像もしていなかったのだろう。切れ長の瞳が僅かだが見開かれていた。
「生きる為に、他になにが出来る」
 この世で共に寄る辺無い身として目覚めて以来、二人が手を取り合ったのも生き抜くためであった。
 もとより、ヨルグに手段の好悪はない。
 この地を治めるのは、鬼忍将と名乗る巨体の男である。将が今の彼等では到底適わぬ強さを持っている以上、それにおもねって後ろ盾を得るのは、生き抜く為の選択として間違いでない。
 しかし、マカパインが頻りに言う妖縛士の誇りはどうなるのか。
「誇りを守るために命を捨ててどうする」
 騎士であるまいに、とマカパインが嗤った。
 その刹那、ヨルグは反射的に口を開いたが、後に続ける言葉が見当たらず、そのまま口を閉じた。
 彼の主張に間違いはない。己の生命を守るためならば、どんな非道も出来るのが人間だ。そしてヨルグも、そんな人間の一人だった。
 命があってこその誇り、生き様である。
 だからこそ、ヨルグの胸中に疑問が鮮明に残った。
 言おうとしたのは、反論だった。


ヨルグとマカパインの皮肉な組み合わせが大好きです。初プレイ時は、なんでこの2人が組んでるんだ、と物凄い勢いで突っ込みました。
それにしても、記憶がない時期のヨルグは主体性がないですね!