• 2012年03月12日登録記事

グレゴリー・デビッド・ロバーツ「シャンタラム」

インドのボンベイに魅せられた白人(脱獄囚)の長い物語。
作者自身の体験を基にしているそうですが、ちょっと信じられないハードボイルド人生です。
さり気ない挿話だと思ったものが全部絡み合っている緻密さや、予想できない展開に何度も驚かされ、次々にページを捲ってしまいました。
もっとも、読み終わって全編を思い返すと、上巻を半分くらい読み進めたところから面白くなり、中巻が山場で、下巻から筆が鈍ったような印象です。主人公の説教臭さや、自慢気な感じが鼻につくところもありました。特に、いつ、どんな展開でボンベイから抜け出すのかを楽しみに読み切ったので、最後は拍子抜けしました。
読み終えてみると、混沌として理解し難い印象だったインドという国に対して、心を開く取っ掛かりが出来たような気がします。パキスタンやアフガニスタンなどの民族、情勢についても勉強になりました。
哲学的な語りが多く、中でも最も言葉を尽して語られる「究極的に複雑な存在(神)に近付くことが善」という分解理論は結構私の中で納得のいく理論でした。

登場人物は数多く、似たような名前も多いので、どういう素性の人物だったか曖昧になる時がありました。
状況が変わると印象がガラッと変わる人物もいたりして、現実的でした。一番好きだったのは、フランス人のディディエですかね。

なお、このブログの読書感想では、自分自身の勉強としてあらすじを付与するようにしてますが、本作に関しては難しい上に失礼だと思いましたので、割愛しました。