• 2012年03月21日登録記事

2009年にエイプリルフール限定公開したBASTARD!!サイトより再録。
原作・背徳の掟編設定。


 終わりなき放浪の日々に、人々は頭を垂れ、導き手たる三人の魔戦将軍に従い歩んでいた。
 ――俯くことの利点は、互いの顔に在る絶望を見ずにすむことだ。
 振り向き道を示したマカパインは、困憊した仲間と民の様子にそう述懐した。
 先頭を行く彼とて、行き先にあてなどない。ただ天と地獄の狭間を逃げ惑い、人の命を繋げているだけである。
 時折天使の襲来や魔族の気紛れに人数を減らし、希望もなく、只管に民を連れて彷徨い続ける己の滑稽さに、時折マカパインは笑いたくなる。しかし笑い方を忘れた口唇からは、溜息が吐き落とされるだけだった。
 死と言う名の諦観に身を委ねたくなる想いは、皆無でない。死ねばそこで総ては終わる。この生き地獄において、安息の死は幸福な夢想ですらある。
 だが生きていれば、為せることもある。ならば這いつくばってでも生き抜き、明日に進むことを選ばねばならない。
 それがこの地獄を現出させた一因である己の義務だと思いながら、マカパインにはもうひとつ、密かに期待することがある。
 あの日彼の前に広がっていた美しい世界は、その存在を知ると同時に失われてしまった。
 あの男が健在ならば、それでも世界は常に美しいと言うのだろうか。この地獄にも煌めくものがあると、気付かせてくれるのだろうか――。
 その問いの答を得るためにも、今は生きねばならなかった。


マカパインは、敗北自体より、その後のガラとの出会いで人生が変わったと思います。
それとも、あの樹海が大霊界だったのでしょうか。